ドイツと中国で展開する新興EVメーカー、Byton。2018年のロサンゼルスオートショーでコンセプトモデルを発表、その後2019年のCESにも出展し、5万ドル以下で「世界最大の車内スクリーン搭載(縦約12センチ、長さ約120センチ)」の高級EVを発売する、としていた。
しかし創業者の一人であり当時のCEOが昨年のロサンゼルスオートショーではあろうことかライバル会社であるファラディ・フューチャーのCEOとして登場するなど、内部で問題があることも浮き彫りになった。ちなみにファラディも創業者が「この会社に未来はない」と退任するなど、資金元の中国企業の業績悪化により浮沈の見られる企業だ。
ロサンゼルスオートショーではその姿が見られなかったBytonだが、1月のCESでプロダクションモデルM-Byteを発表。中国南京には年間30万台の生産が可能な「インテリジェント・マニュファクチャリング・システム」を備えた工場がすでに完成しており、今年後半に発売を開始する、としている。
新たにCEOに就任したのはダニエル・キルチャート氏。同氏はM-Byteについて「スマートEVとデジタルプラットホームを融合させた、世界初のホイールに乗ったスマートデバイスである」と強調した。来年以降量産体制に入る予定だという。
そのプロダクトモデルだが、ロサンゼルスオートショーなどで発表されたコンセプトモデルと比較すると、やや角が取れたイメージがある。言い方を変えればコンセプトでは非常に未来的な外観だったのが、シャープさは残しながらもう少し一般的な車のイメージに近づいた。しかし車内の大スクリーンは健在で、計器類の他様々な情報を表示することが出来る。後部座席のモニターも含めて車内エンターテイメントシステムが充実している。
今後グローバルで販売を始めるに当たっては資金も必要だが、昨年12月のシリーズCファンディングで丸紅が同社に投資、今後両社はストラテジック・パートナーシップを組むことも会見で発表された。
キルチャート氏は「丸紅の持つ再生可能エネルギー技術、自動車販売網とBytonの技術を融合させ、スマートな車だけではなくモビリティ・サービス、エネルギー・ソリューションを世界中に提供していきたい」と語る。具体的には自動運転技術の開発や、電力ディストリビューションを交えたEVを組み込む家庭用、企業用エネルギー・ストレージなど社会的電力インフラの構築だ。
また丸紅側も同社の社会産業・金融グループCEOである河村肇氏のコメントとして「現在の自動車産業の大きな転換期において、Bytonへの投資とパートナーシップは我が社の自動車戦略の大きな要になる。Bytonの持つ優れた技術により、新しいモビリティ・ワールドを生み出すことを期待している」としている。