ダイムラー社がメルセデス・ベンツの未来のカタチのコンセプトとして、Vision AVTR(アバター)をCESラスベガスで発表した。ダイムラー会長でありメルセデス・ベンツ部門のトップであるオーラ・カレニウス氏による基調演説の中で、メルセデスの環境問題への回答として出された車である。
まずカレニウス氏は車の今後の姿として、IoTによりスマートホームを外からコントロールするインターフェイスとしての役目、さらに車と人との感情的なつながり、あたかも車がドライバーの行動を理解し、絆が生まれるような関係が求められる、と語った。そしてバイオメトリックにより、車と人との一体感を高め、テクノロジーと自然が融合する姿が理想なのだという。
これからの地球環境を考える上で、まず誰もが思いつくのが限られた資源の問題だろう。人類の今後という大きなテーマで捉えた時、自然を守り次世代に豊かな地球を残すことは企業としての使命でもある。しかしそれを実現するにはこれ以上車を作らない、エネルギーを消費しないことが答えなのか。
これまでは車の販売台数が増えるにつれ、車を作るための資源も比例して増加していた。しかしこれからは販売台数が増えても資源の使用は低く留まるような車作りをする必要がある。そのためにメルセデスが掲げているのは3つのR、Reduce、Recycle、Reuseだ。まずReduceは車によるCO2排出を極力抑えること。これにはEVラインナップの増加も含まれるが、製造の段階でも無駄を省く努力が行われている。同社では2030年までに工場での水の使用量を30%、電力を40%、ゴミの排出を40%削減することを掲げている。
RecyleとReuseは、95%のリサイクル率を達成すること。特にEVにおけるバッテリーにセカンドライフを与え、廃バッテリーが新たな公害の元になることを防ぐ。こうして素材の二次使用を推進することで、環境に対して「ゼロ・インパクト・カー」を生み出すことができる。
メルセデスのシンボルであるスリー・ポイント・スターのエンブレムは1つが人類、1つが自然、そして1つがテクノロジーを指す、というのが今のメルセデスの考え方であり、この3つのバランスが取れる車作りが目標となる。
今回発表されたコンセプトカーを作るに際し、メルセデスがパートナーに選んだのは映画「アバター」だという。Vision AVTRと名付けられた車は、例えばシートの素材に「ビーガン・ダイナミック・レザー」と呼ばれる植物由来の合成皮革を使用する、リサイクル素材を多く使用するなどの工夫が満載だ。
しかしなぜアバターなのか。アバターという映画は人造生命体と人とを神経結合して仮の肉体で行動する、という内容だ。これにヒントを得て、人と車が組織的に結合するような感覚の車を生み出そう、というのがAVTRの目的なのである。