昨年のロサンゼルスオートショーで新しい市販モデルとコンセプトモデルを発表し、エコカー戦線に名乗りを上げたカルマ・オートモティブ。前身はフィスカー・オートモティブで、同社の代表的な車だったカルマの名を社名に、中国万向集団の資本により再生した。
一時はカルマを復活させる、としていた同社だが、2014年から「ハイテク・アーバン・トランスポーテーション」を提供するテクノロジー企業へと路線を変更した。現在の同社はテクノロジー、金融資本、エンジニアリングを3つの柱に挙げている。
同社の市販モデルとして紹介されたのはRevero GTS、コンセプトはカルマSC2だ。どちらもEREV(Extended Range EV)、つまりマイルドハイブリッドを採用している。Reveroの場合、純粋なEVとして走行できるのは80マイル(126キロ)程度で、ガソリンを使ったジェネレーターのアシストで合計360マイル(576キロ)の走行が可能になる。
カルマ社はCES期間中に開催された自動車マーケットリサーチ会社、TU Automotive社主催のコンシューマー・テクノロジー・ショーで基調演説を行った。その際に同社のエレクトリカル・エンジニアリング部門副社長、シェン・ザン(張抻)氏、社員統括のマイケル・エリー氏に話を聞くことが出来た。
まずザン氏には、EVメーカーであったカルマがなぜハイブリッドシステムを採用することになったのかについて聞いた。ザン氏によると「ガソリンでジェネレーターを回してバッテリーの持ちを高めるのが目的で、ハイブリッドというカテゴリーに入るのかは分からない。しかし現在のバッテリー技術では人々が持つマイレージ・アングザイエティ(走行距離への不安)を解消することは出来ない。安心して長距離ドライブを楽しんでもらうためには、EREVが最良の回答だと考えた」という。
またカルマは「スケートボード」「コックピット」「カーネット」「ドライブ」「クラウド」を同社の5つのエコシステムとして掲げているが、スケートボードとはフレームにバッテリー、モーターなどを組み込んだEVの基盤となるものを指す。この上にボディを載せて車が完成する。同社ではこのスケートボードをはじめ、5つのエコシステムを他社にライセンス供給するというビジネスを発展させたいとしている。
しかし同様の考えは多くの新興EV企業からも聞かれている。Rivian社は同社のスケートボードをフォードに供給することが決定しているし、ファラディ・フューチャーも同様の考えを示している。この競争の中で勝算はあるのか。この点についてザン氏は「我が社の技術は他社より優れていると思う。優れた技術を提供できれば、我が社のシステムが選ばれるだろう」と語り、名前は明かせないがすでに現在数社のメーカーとスケートボード提供について協議中だという。
特に興味深いのは同社がクラウドをエコシステムの柱に挙げていることだ。通常グーグル、アマゾンなどのIT企業が提供するクラウドを、なぜ自動車メーカーとして提供しようとするのか。それについては「クラウドこそがこれからの自動運転やエンターテイメントシステムなどを提供する中で中心になるものであり、クラウド構築は欠かせない要素だ」と強調した。
経営破綻して、中国企業に買収された同士
これも万向集団という巨大コングロマリットの傘下にある強みかもしれない。ちなみに同社にバッテリーを供給しているのはA123バッテリー社だが、こちらも元は経営破綻した米企業で同じ万向集団に買収された、いわば兄弟会社である。グループ内で様々な調達が出来ることで、他社にはないメリットを受けているのだ。