インドが、射程5000km超の核弾頭搭載型・長距離移動式ミサイル、「アグニ5号」の実験に成功したことを受けて、ウォールストリート・ジャーナル4月22日付社説がその意義を論じています。
すなわち、インドはアグニ5号を欧米に届く大陸間ミサイルに仕立てることが出来るだろう。そうなれば、米ロのミサイル技術の優位は脅かされることになる。これで、拡散防止軍備管理条約の愚かさが明らかになった。インドはNPTにも入っていないし、ミサイル技術管理レジームも独自開発で乗り越えた。インドのような国は、西側が作った様々な規制があるにもかかわらず、必要な兵器は開発するということだ。
しかし、世界はインドのことはあまり心配していない。米国はインドが不拡散でよい実績があると言っており、中国もインドはパートナーだと言っている。事前通告を受けたパキスタンも、何の反応も示さなかった、要するに、西側は、インドを軍事的脅威とは思ってはいないのであり、これが、イランや北朝鮮のミサイルや核開発に対するのと非常に違う点だ。
要は、重要なのは兵器自体ではなく、それを有する政権の在り方だ、ということだ。オバマ政権にも兵器自体が脅威だとする[軍縮屋]がいるが、引き金に手をかけているのが英首相キャメロンなのか、それとも金正恩かアハマドネジャドかで話は全く違ってくる。
このインドの実験で、中国は再考を促されるだろう。中国は、威圧的政策がアジア・太平洋地域における支配力の確立につながると思ったかもしれないが、実際は逆だ。日本、フィリピン、ベトナムは米国に接近するようになり、インドも中国を抑止しようとしている。
また、米国にとり、今回のインドの実験は、ミサイル防衛や衛星防衛への投資と、ならず者国家に大量破壊兵器を持たせない努力を強化する必要性を示している、と言っています。
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脅威は兵器そのものではなく、政権の性格から来る、という社説の主張はその通りでしょう。また、インドによるアグニ5号の実験成功は、インドの抑止力の強化という点で大きな動きであり、これは今後、地域情勢に影響を与えることになるでしょう。
その影響とは、一つには、これで中印間の全面戦争の可能性はほぼなくなったと考えられる状況が生じたことです。今後とも、中印間では、相互確証破壊状況が強化されていき、従って、中印領土紛争についても、中印双方が大きな紛争にエスカレートさせないよう気を使うことになるでしょう。軍事力という点では、中国の方が強くなりますが、インドも中国に耐え難い損害を与える能力がある、つまり十分な抑止力を持つ、と中国は考えるでしょう。その結果、中印はますます相互尊重の関係になると思われます。