石原さんはコロンビアでまず自社農場を作った。500メートル四方の農園を始めたが、事業が軌道に乗るにつれ契約農家を増やし、今では4000軒にのぼる農家と取引する。コロンビアのパートナー企業の工場でチョコレート原料に加工、年間200トン近くを製造する。使うカカオ豆にすれば2000トンだ。
石原さんとコロンビアの関係はどんどん深まっていった。16年からは、コロンビアで学校を建設するプロジェクトにも乗り出した。自社農園近くの学校に新校舎を立てたが、きちんとした教育の機会を与えることで、工場や農園で働く人材を育てようと考えたのだ。現地のパートナー企業と組んで、学校建設を行い、今では500人の生徒が学ぶようになった。
コロンビア側の供給体制は急速に整っていった。問題は、そうした良質のカカオ豆から製造したチョコレート原料をきちんとした価格で仕入れること。そのためには、最終的な「出口」、販路が不可欠だ。日本側にセンスの良いチョコレートショップを作ることがカギを握った。
石原さんが作った「ca ca o」の本店は神奈川県鎌倉の中心「小町通り」にある。鶴岡八幡宮に通じる最も観光客など人通りの多い通りだ。「鎌倉」のブランドバリューも高く、周辺に住む住民の消費センスも高い。
さらに神奈川・大船、東京・新宿の駅ビルにも店を出した。口コミもあって、おしゃれなパッケージと絶品のチョコレートの人気は一気に広がった。
看板商品である「アロマ生チョコレート」は含まれる水分量を限界まで高め、口に入れた瞬間にとろける。マスカットなどフレッシュな旬の果実、お茶や日本酒を合わせた商品もある。サクサクとした生地に生チョコレートを乗せた「リッチ生チョコタルト」は1日に1000個売れる。
鎌倉駅前の銀行を変身させる
鎌倉駅前の銀行の支店跡地に作った店舗「CHOCOLATE BANK」には、金庫だった場所を改装した特別室を設け、「ガストロノミーレストランROBB」を19年にオープンした。1日2枠の完全予約制のランチで、カカオのフルコースを出してきた。新型コロナに伴う営業自粛で店舗はいずれも臨時休業中。だが、オンラインでの販売は続け、その対応に追われている。
店舗はいずれも洗練された構えだが、もともと石原さんは「ca ca o」を、世界の高級ブランドと肩を並べる「世界ブランド」にすることを狙っていた。