親書や会談などを通じて、日本は中国に対し「尖閣の安定的な現状維持には国有化が適当だ」と粘り強く訴えていくことが重要だ。中国の理解を得た上で、早期に尖閣国有化を実現し、領土紛争を凍結しつつ尖閣の実効支配を続けていくことが望ましい。
中国の公船に警戒を
ただ、今後も注意すべきは、中国公船の尖閣付近での動きである。
今年3月、中国海洋局傘下の東シナ海海監総隊の監視船が領海内に侵入。尖閣国有化公表後の7月11日には中国の漁業監視船3隻、12日には同1隻が尖閣の領海に侵入した。
3月21日付の人民日報によると、同総隊責任者はインタビューの中で、2006年7月に東シナ海海域で「主権を守るための定期巡航」を初めて実施し、07年3月には定期巡航の制度を確立したと言明した。
08年12月、東シナ海海監総隊の監視船2隻が尖閣領海に侵入し、約9時間も徘徊した。近年、中国は明らかに尖閣付近での中国公船の活動を活発化させてきたのだ。
「2022年問題」を質せ
5月24日付の拙稿で伝えた通り、中国の軍部や海上警備当局には「日本の実効支配が50年続くと国際法の判例で尖閣が日本の領土として定着しかねない」との危機感がある。
1972年5月の沖縄復帰によって、尖閣が米国から日本に返還されて50年後は2022年5月となるため「2022年問題」とも言われる。
そうした国際法判例が当てはまるのか、わたしは確認していないが、中国の関係者の間で、こうささやかれているのは確か。海上治安当局は時効への焦りから、尖閣の領海侵犯を繰り返している可能性があるのだ。
わたしは時効問題が伝えられた3月以来、中国の外交官や学者に会うたびに説明を求めた。彼らは「一部にそうした見方があるものの、中国政府の公式的な立場ではない」と説明した。
日本政府は中国との対話の中で、こうした問題を質していく必要がある。中国が尖閣問題の棚上げを求めるなら、領海侵犯などによって現状を変更してはならないと強く訴えていかねばならない。