2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年9月11日

 米ヘリテージ財団のディーン・チェン研究員が、同財団のウェブサイトに8月2日付で論説を発表し、アメリカが対抗する圧力を加えない限り、中国は東南アジア諸国に対して圧力を加える能力があることは明らかなのだから、国防費削減によるアメリカの海軍力の減少は憂慮すべきである、と論じています。

 すなわち、ヨーロッパのバランス・オブ・パワーは、覇権国に対抗するためのものであるが、アジアでは、力に対する黙認となる。アメリカの介入が無い限り、アジア諸国は手を拱いているばかりだ。

 最大の問題は、アメリカ海軍の縮小だ。現在の286隻という艦艇の数は、必要とされる313より少ないし、もし予算の「強制削減(sequestration)」が実施されれば230になってしまう。

 最近の中国の広州軍区の軍備増強は著しく、南シナ海はますます危険なフラッシュ・ポイントとなって来た。米国は軍事力を維持することにより、この地域にコミットしていることを示すべきだ、と述べています。

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 中国が三沙市を設置するという動きに出て以来、中国の南シナ海進出の意欲に警鐘を鳴らす論説が多く出て来ていますが、これもその一つであり、政策論としては、予算削減による米海軍の船舶数の減少に憂慮を表明しているものです。

 いずれの論説も同じように危機感を表明していますが、この論説で一つ面白いのは、バランス・オブ・パワーの変化に対して、ヨーロッパとアジアの違うところは、アジアは、アメリカの介入が無いと、黙ってそれを容認してしまうことだと言っていることであり、これは東南アジアにおける実情をある程度正確に認識したものと言えましょう。もちろん、アメリカが介入したからといって、各国が直ちに積極的に協力するというわけではありません。しかし、各国が内心はそれを歓迎している、ということだけは、アメリカは認識する必要があります。


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