川柳のペンネーム、柳号って?
ショーゼン 今日は、句そのものではなく、ペンネームのことについてお話ししましょうか。のぞみさん、川柳詠みが使うペンネームをなんていうかご存じ?
のぞみ はい、柳号(りゅうごう)ですよね。
ショーゼン そうです。俳句なら俳号、書道、日本画なら雅号。「芭蕉」「鴎亭」「大観」・・・・・・。日本の美しい四季や心のありようにちなんだ立派なペンネームばかりだよね。
のぞみ あ、でも柳号は雅号とは様子が違うなあ。自然風物をあらわした柳号には、お目にかからないかも。本名の人も多いし、ペンネームの場合もなんか人間臭いというか。
こだま そうね。川柳そのものが、人心の機微を詠む文芸だからかしら。
ショーゼン こだまさんの言うとおり。川柳には、俳句で使うような硬い熟語や季語は使いませんよね。だから柳号にも、句に沿って人間味のある言葉を用いる人が多い。
『三国志』や『宮本武蔵』を書いた歴史小説の大家・吉川英治も作家として売れる前の貧しい時代は川柳詠みだった。彼の柳号は「雉子郎(きじろう)」。「焼け野の雉 夜の鶴」(棲んでいる野を焼かれたキジが、炎の中で自分の子を救おうとし、ツルは寒い夜に自分の羽でその子を暖めることから、親が子を思う情の深いことのたとえ)に由来するものです。
貧しさもあまりの果ては笑ひ合ひ 雉子郎
貧しさのなかにも、彼らしい孝行の心、家族愛を感じる句だと思わない?
ちなみに僕は本名の下の名前「昌善(まさよし)」を「しょうぜん」と音読みで読ませて、柳号にしています。