米プリンストン大学のアーロン・フリードバーグ(Aaron Friedberg)が、The Diplomat誌ウェブサイトに10月9日付で「アメリカはアジアで『背後から指導』することはできない (America Cannot ‘Lead From Behind’ in Asia)」と題する論説を寄稿し、米国はアジアの先頭に立って対中政策を遂行すべしと論じています。
すなわち、ワシントンは中国に対する姿勢をより宥和的なものへと微妙に変えて来ている。当初、ワシントンは、強い姿勢を打ち出そうとしたが、現在は、東シナ海や南シナ海での中国との領有権争いで米国は最終的にどちらの味方もしないと言明するなど、アジアの同盟国との間にやや距離を置こうとしている。
しかし、この米国の新たな戦略的シフトは早計に過ぎ、結局は逆効果ということになるかもしれない。中国の指導者たちは宥められるつもりなど毛頭なく、米国の弱さの表れと受け止める可能性がある。
今の米国のやり方が危険を孕んでいることは明白だ。オバマ政権は、北京を宥めようとして、これまでに達成したものを掘り崩してしまう恐れがある。中国以外のアジア諸国は、新たな冷戦に巻き込まれることは勿論望んでいないが、強大化してきた中国と単独で対峙する羽目に陥ることも深く恐れている。「アジア回帰」の目的は、現在の財政的困難にも拘らず、米国はアジアから手を引いてこれらの国を見捨てるようなことはしない、ということを改めてこれらの国に保証することにあった。
アジア諸国は、おおむね米国の「アジア回帰」を歓迎したが、米国がこれを最後まで守り通す意思と資金力があるのかどうか、確信を持てずにいる。米国防予算削減と、わずか数カ月強硬な言辞を呈しただけで、ワシントンが既に対中姿勢を和らげる素振を見せていることは、こうした疑念を強める。
中国が強大になる中、各国は国益を守り、平和を維持してくれる勢力均衡を保つためにもっと努力しなければならない。米国とアジアの友好国、同盟国は、総合すれば、そうした均衡を保つのに十分以上の手段と力を持っている。しかし、ワシントンが、他の諸国に対してそれぞれの役割を果たすよう望むのであれば、ワシントン自身も断固たる姿勢で中国に臨む必要がある。さらに、もっと重要なのは、米国は中国軍に対抗するのに必要な軍事能力の構築に向けて、巨額の長期的投資をする必要がある、ということだ。アジアに関しては、米国には「背後から主導する」という選択肢はない、と論じています。
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フリードバーグの主張は、簡潔にして明瞭です。米国は中国に対し、アジア諸国の先頭に立って、より厳しく当たるべし、ということです。米国の対中政策の右往左往(flip-flop)を懸念する保守系専門家の間では、論説の指摘と結論は、当然のことと言えます。