2024年7月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年11月28日

 米国は、尖閣の領有権には中立を維持する一方、尖閣には日米安保条約第5条が適用されると公言しています。日本だけでなく、アジア諸国の懸念は、こうした米国のコミットメントがどこまで本気かということでしょう。

 ただ、中国が、漁船や監視船など非軍事的手段ではなく、人民解放軍部隊を使って尖閣諸島に対し武力行使すれば、最終的に、米国は日本を守る条約上の義務を履行すると考えられます。そうしなければ、その時点で日米同盟は終わり、米国のあらゆる同盟政策が破綻に向かいかねません。

 むしろ、真に重要なのは、尖閣をめぐる「米国参戦」に三つの前提条件が付くことでしょう。 第一は、尖閣をめぐる日中間の武力衝突が、あくまで中国側の「挑発」によるものであり、日本側が「挑発」した結果であってはならず、先に軍を使うのは中国であるべし、ということです。第二は、中国からの武力行使に対し、まず自衛隊が出動して、実際に血を流す覚悟で戦うことです。第三は、それでも、米国の参戦は躊躇を伴うということです。米国は、尖閣だけでなく、南シナ海全体を見ているからです。米軍の軍事介入が限定的となる可能性がある以上、中国が武力行使すれば、日本は自衛隊だけで一定の結果を出す必要があります。

 本論説が問うているのは、米国が中国と向き合う覚悟とともに、アジアにおける米国の同盟国・友好国の側の覚悟でもあります。その中でも、最大の同盟国である日本の覚悟が最も強く問われていることは間違いなく、これに応えることは、日本自身の安全と地域の安定に不可欠であると、認識する必要があるでしょう。

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