2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年12月5日

 英国人でバンコクを拠点とするフリーランス記者のスティーヴ・フィンチ(Steve Finch)が、Diplomat誌のウェブサイトに10月19日付で掲載された論説で、北朝鮮の経済改革について、金正恩が経済の改善を望んでいることは確かだが、農業改革にまで踏み込めば、体制の深刻な不安定化につながる恐れがあると、論じています。

 すなわち、金正恩が農業改革に取り組もうとしているとの情報がしきりに流れている。地方の協同農場の人民委員長が、平壌からの指示によるとして、10~20名で構成されていた作業班分組を今後は4~6名に縮小し、生産した農産物も、これまでのように国に全納するのではなく、30%は農民が保持して良いことになるとの説明を始めている。

 金正恩が、農業改革にまで踏み切るか否かは解らないが、経済の改善には度々言及している。軍首脳部の入れ替え人事に踏み切っただけでなく、最近になって農業大臣を交替させたことから見ても、金正恩が経済の改善を決意していることは確かである。

 問題は、経済改善のための資金をどこから得るかである。北朝鮮には外国投資家や実業家を惹きつけるようなビジネス環境が無い。北朝鮮経済の生命線とも言うべき中国からの投資誘致すら、必ずしもうまくいっていない。

 開城工業団地の方は、本年前半には生産額が23%も伸びたが、韓国側進出企業の大半は、依然として赤字である。8月には、北朝鮮は韓国企業に対し、突然に多額の課税通告を行っている。開城工業団地の北朝鮮人労働者の賃金の大半は政府の手に入っているが、シベリア等、国外に送り込まれている北朝鮮労働者の賃金も同様の扱いである。

 中朝貿易は伸びている。国連の制裁を受けていることもあり、北朝鮮の対外貿易に占める中国のシェアは昨年で90%近くに達している。しかし、大半は中国からの輸出であり、北朝鮮が中国に売れるものは殆ど無い。

 北朝鮮が農業改革に踏み切ることができれば、北朝鮮の生産力も増すであろうが、金正恩の動ける余地は限られている。米国務省で北朝鮮を担当したEvans Revere氏が言うように、政府が生産手段の管理権を失うことは、深刻な不安定要因にもなるからである、と論じています。

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 北朝鮮の経済改革については、本年6月28日に「新経済管理改善措置」として党幹部らに伝えられたとされ、本年9月25日の最高人民会議で何らかの発表が行われるとの観測もありましたが、結局、何らの発表もありませんでした。


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