2024年4月25日(木)

中国はいま某国で

2013年3月6日

 アンゴラの首都ルアンダ郊外に林立する真新しい集合住宅群について、英公共放送BBCが報じたのは12年7月のことだった。

 同国で長年政権の座にあるジョゼ・エドゥアルド・ドス・サントス大統領は、国民に十分な住宅を与えることを政策の目玉とする。問題のアパート群は中国のCITIC(政府系大手金融グループ、中国中信集団)が建てた。習近平・中国国家主席が現職就任前にアンゴラを訪れた際、大統領の案内で見学に出向いた先でもある。ところがBBCによると、借り手が現れず、これが空き家だらけだというのだった。

 流れは変わらなかった。報道の2カ月後、同じCITICがアンゴラ内10県で10万戸の住宅をつくる計画が明らかにされた。中国の鉄道会社は貨物線を敷き、アンゴラ内戦で破壊されたマブバス水力発電ダムは、2170万ドルの経費を負担し中国企業が再建した。

 こんな関係を指して、アンゴラ外務省高官のフランシスコ・ダ・クルス氏は「内戦の終結が02年。まさにインフラ再建が必要となるその時に、中国マネーが入ってきた。実に時宜を得ていた」と12年11月に北京で語り、ありがたがっていることを隠さなかった。最近は軍・軍関係も深まりつつある。

 もちろん中国は、すべてをタダで提供しているのではない。経費はアンゴラが中国に売る石油代金から差し引く形という。どこまでがそのように物々交換的に決済され、贈与はどれだけなのか、実態は知るべくもない。

 アンゴラは旧宗主国がポルトガル。中国に、同じ言葉が通じる地がある。香港同様の地位にあるマカオだ。アンゴラとの関係拡大のため、マカオは12年の6月、首都ルアンダに大使館的事務所を設けた。中国にしてみれば、欧州帝国主義の置き土産を活用した形だ。底流で多々問題が生じ、アンゴラ国民の対中感情は複雑なのだとしても、北京・ルアンダ関係の深化は続く。

 (本連載は今号で終了です。ご愛読ありがとうございました。筆者)

[連載]中国はいま某国で
[特集] 習近平と中国 そして今後の日中関係は?

◆WEDGE2013年3月号より

 

 

 

 

 

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