2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年4月10日

 3月7日付ウェブ米National Interest誌にて、Iskander Rehman米カーネギー平和財団研究員は、インド洋は今後ますます重要性を増すだろうから、特にA2AD(接近阻止と地域拒否)問題と核兵器の海洋への展開を念頭に、米国とインドは、インド洋での海洋協力を進めるべきである、と論じています。

 すなわち、インド洋地域は不安定で、特にアフリカの角とアデン湾周辺で海賊が活動している。パキスタンやソマリヤでイスラム過激派は活発である。仏の国防省は白書で、「不安定の弧」がセネガルのダカールからパキスタンのペシャワールまで広がっているとしている。

 その他、二つのことが海洋環境を変えている。一つはA2AD(Anti-Access、Area Denial)技術の拡散であり、もう一つは核兵器の海洋配備の進展である。

 A2ADに関しては、技術の進展はこれを魅力的なものにし、中国に加え、イラン、パキスタンがそれを試みている。A2ADは弱者の戦略であり、以前の攻撃に対する防禦的戦略、沿岸防衛を衣替えしたものとも言える。イランはハイブリッド型のA2AD戦略を有しており、ゲリラ的やり方で目的を達成しようとしている。パキスタンもインドに対し同じやり方をしている。両国とも、有事の際のエネルギー輸送路の妨害を狙っている。

 2012年5月、パキスタンは海軍戦略軍司令部の設置を発表した。インドが最初の核搭載潜水艦を就航させることへの対抗であるが、これは核兵器の分散とインド海軍の通常兵器での優位への対応である。水上艦艇への核配備も考慮されている。これは軍事的不安定化をもたらす。

 インドと米国は、インド洋で似たような挑戦を受ける。A2ADは、米印間での海軍協力の第1議題になるべきである。経験を共有することで有益な結果を出せる。インドは小型舟艇による攻撃への対応に経験があるし、米国は対潜水艦戦で経験を有する。米の海軍力が伸び悩む中、米印海軍協力は進められるべきである、と述べています。

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 このレーマンの論説は、インドとパキスタンが核兵器の海洋配備を進めてきていることを指摘しているだけでも意味があります。


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