11月5日付ウェッブThe Diplomat誌で、C. Raja Mohan印オブザーバーリサーチ基金研究員は、インド洋・太平洋における情勢は、中印両国の海軍強化に伴い、米印中の3カ国関係に左右されるだろう、と述べています。
すなわち、米中間の戦略的力学がアジア情勢を決める上で重要であるが、アジアには他にも多くの大国があり、それらがある程度の自律性をもつ。
インドはそうした地域大国の一つである。インドの潜在力は米中ともに認知している。パネッタ国防長官は昨年6月インドを訪問し、インドをアジアへの軸足移動の要と呼び、劉光烈中国国防相も近く訪印する。
インドは20世紀半ば以来、中国とは困難な関係を持ってきた。印中間には2国間紛争があるし、かつ地域でのライバルでもある。今後、印中関係が悪化するか、改善するかはアジアの新しい均衡に大きな影響を与える。
最近、印中関係は経済関係は緊密になったが、政治的には緊張している。ヒマラヤでのみならず、インド洋・太平洋に緊張が及んでいる。印中ともに、海軍力を増強し、遠洋でも影響力を行使しようとしている。両国の海軍は重要拠点へのアクセスを獲得し、海軍が遠洋海軍として活動できる政治関係を他国と作ろうとしている。その結果、太平洋・インド洋で摩擦が出てきている。両国とも非同盟イデオロギーから徐々に離れている。
中国の台頭と海洋国家としてのインドの出現は、インド洋と太平洋が別の戦場ではなく、インド太平洋という一つの戦略空間であるとの認識を広めている。中国の主たる関心は西太平洋にあるが、インド洋での中国の活動はインドの懸念を呼び起こしている。インド海軍はインド洋での優位に主たる関心を持っているが、西太平洋にも海軍をたびたび派遣している。インド海軍のベトナムとのかかわり、南シナ海での航行の自由主張、日米との共同演習は中国を刺激している。
インドは中国の経済成長の利益を享受したいと考えているが、同時に中国が地域を支配することに制約を加えたいと考えている。中国がインドより速く台頭しているので、印中間の戦略的ギャップは大きくなっている。インドは国の内外で均衡を取っていくしかない。
インドが米国と同盟を組むことは、インドにとり自然なことに見える。しかし、インドは米国の対中政策が一貫していないこと、アジアへの軸足移動が財政的、政治的に維持可能かどうかを懸念している。インドは米中接近の危険を意識しており、それで中国への不必要な挑発を避けつつ、米国との軍事関係の強化を追求している。