ファイナンシャル・タイムズ5月18日付で、Kishore Mahbubani シンガポール国立大学教授が、インド訪問中にクリントン米国務長官が提案した中印米の対話に中国もインドも前向きに応えるべきだ、と言っています。
すなわち、中国はこの提案を本能的に拒否しそうだが、中国はよく考えてみるべきだ。米印が対中共同戦線を組むことはあるだろうが、中国とインドが協力することも、また、中国と米国が手を組むことも十分ありうる。
例えば、クリントンは気候変動と貿易問題の解決のために中印米対話が必要だとしたが、この問題では中国とインドが協力しうる。両国とも、これまでのCO2排出は米国に責任があり、貧しい中印に削減を押し付けるのは不公正だと見ている。
また、米国にとってイスラム世界は難問だが、中国とインドはイスラム世界との付き合いが長く、この面で米国を助けることが出来る。さらに、米国も中国もパキスタンの安定を望んできたが、今やインドもそれを望むようになってきている。他方、米中は台湾問題をどう沈静化させたかをインドに教え、パキスタン問題で同様なアプローチをとるよう勧めることができる。
民主主義やチベット・ダライ・ラマのような国内政治問題については、米国とインドの見方に共通性があるが、中国にとってもダライラマの生存中にチベットについての長期的了解を成立させることが利益になる。3カ国の間で信頼が築かれれば、こうした微妙な問題も議論出来るようになるだろう。
要するに、クリントンはウィン・ウィン関係につながり得る素晴らしい提案をした。ゴールドマン・サックスは、経済力で2050年までに中国が世界で1番、インドが2番、米国が3番になると言っている。この3カ国が出来るだけ早く協力することが世界のためになる。インドと中国はクリントンの提案に肯定的に応えるべきだ、と言っています。
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マブバニの提言は、G8を廃止し、中印米3カ国首脳会議を行うのがよいというものですが、G8を廃止すべき理由がきちんと説明されていません。G20と東アジアサミットは存続させるが、G8を廃するということは、G8と中印米対話が取り換え可能だということですが、根拠がはっきりしません。
また、中印米対話のメリットについて種々論じていますが、それも説得力がありません。中国が台湾問題を鎮静化させたやり方を印パ関係に応用するとか、米国はイスラム世界との関係をマネージするやり方を中印から学びうるとか、信頼関係が出来ればチベットや民主主義の話を3カ国で出来るようになるとか、いずれも非現実的な発想です。