2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年4月19日

 National Interest 3月26日付で、米空軍調査研究所のAdam Lowther教授とPanayotis A. Yannakogeorgos分析官が、中国の核兵器戦略と能力を理解することは困難であり、そのため推測の域は出ないが、現在も将来も中国にとって戦略上の敵は米国だ、と論じています。

 すなわち、米国と異なり、中国は核兵器制限ないし軍縮協定の署名国ではないので、関連情報を開示する義務を負っていない。これが、ミサイル担当部局である人民解放軍第2砲兵隊の能力を知るのを難しくしている最大の原因だ。

 他方、配備済みの戦略核兵器・中距離核巡航ミサイル・潜水艦発射核弾道ミサイル・核搭載爆撃機などの数と能力については、確たるものではないが、推定値はある。いずれにしても、全体としてそれらの予算が目立って増えていることははっきりしている。

 そうした中国の核戦力の戦略上の敵は米国であり、その主たる目的は、米国の利益を人質にとることにある。そのため、中国は、米国が優位にある通常兵器や核兵器に脅されることのないように、核兵器を隠ぺいし、中国の脆弱性を隠している。また、中国指導部は18世紀、19世紀に受けた「屈辱」は繰り返さないと強く決意しているようだ。

 そして、2050年までに米国と同等の(たとえ凌駕はしなくても)核能力を保持することを目指している。

 では、 具体的にどこに配備されているかと言えば、全国に広がる延べ5000キロのトンネルを使い、限定的ながら、米大陸を攻撃できる能力を保持している。

 また、第1列島線、第2列島線以内に関しては、より大きな核兵器能力、通常兵器能力を持っているだろう。これは、中国指導部が、中国統一を目指して台湾に焦点を合わせているからだ。そのため、いざという有事の際、米国が中国人民解放軍の台湾進攻を阻むなら、台湾に核報復することもあり得るだろう。その際、重要なことは、「台湾は中国の一部」との立場から、中国が核兵器を初めに使用しても、それは「核先制不使用」には当らないとの見方をとるだろうという点だ。

 他方、台湾海峡有事の際に、米国空母群に対して中国が核を先制使用する可能性は極めて小さいだろう。


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