米German Marshall Fundの研究員で、インドの有力メディアの論説員でもあるジャイシャンカーが、インド海軍は小ぶりながら、太平洋(特に南シナ海)方面でも存在感を発揮し得ることを強調した論説を、12月6日付Foreign Policy誌ウェブサイトに発表しています。
すなわち、2006年以来、インドの国営ONGC Videsh石油会社は、ベトナム沖深海石油探査に参加している。ここは、中国が主権を主張している海域で、将来、中国がインドの利権に難を言うことがあれば、インド海軍は、武力でこれを守る計画を持っている。
インドでは、海軍は伝統的に軽視されてきた。今でもインド海軍は6万名の人員、70億ドルの年間予算を有するのみで、中国海軍の4分の1である。戦力は空母1隻、14隻のディーゼル潜水艦、約20隻の駆逐艦しかない。しかし、それでも、インド洋では米海軍に次ぐ規模であり、中国と係争を持つベトナム、フィリピンのものより遥かに大きい。インドの小艦隊(Squadron)を短期間派遣するだけでも、西太平洋のバランスに意味のある変化を起こすことができる。
インドの経済は急成長しており、原子力潜水艦を独自開発中であり、また、2年以内にもう1隻の空母を入手予定で、2009年には米国からP-8(P-3哨戒機の後継機)購入で合意している。
インド海軍は、米国及び豪州の海軍、日本海上自衛隊などとの協力を進めてきた。中国は、東南アジア諸国及び日本と領土で係争しているため、その軍事的な動きは周辺の猜疑心を呼び起こすが、インドは、太平洋方面で領土要求を持たない。中国が領土問題で攻撃的な挙に出ているために、インド、ベトナム、フィリピンを接近させる結果になっている。
インド経済の成長と太平洋地域との通商関係の発展、そして海軍の増強、これらの要因により、インドは太平洋地域の安全保障とシーレーンの自由の確保に貢献できるようになった。これは、米国等多くの国が歓迎するところであろう。中国にとっては太平洋パワーとしてのインドを認め、これとの協力を推進する好機である、と論じています。
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もっぱら中国を念頭に置いて「太平洋パワーとしてのインド、ここにあり」と宣言したような、若干勇ましい論説です。この論説が言う「太平洋パワーとしてのインド」に、日本としては、異存はないでしょう。他方、インド海軍に過度な期待を寄せることは適当でなく、日本は、インド海軍と交流を絶やさず、相互に寄港、多数国間での共同演習を続けていく程度で(インドは2012年リムパックに人員を参加させている)、中国に対する一定の抑止力となります。