2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年1月10日

 この論説は、中国を敵対的にとらえていますが、インド国内は、中国敵視・親米ということでまとまっているわけでもなく、中印間では定期的な共同軍事演習すら行われています。また、インドは日本を独自の外交ができる勢力とも見ていないようです。したがって、安保面での日印関係に過度の期待を寄せることは適切ではありませんが、インドが日本にとって不可欠の環であると言うことに間違いはありません。日印の安保協力にあたっては、こういう微妙な距離感をよく認識する必要があり、対中牽制カードとしてインドを使う、というような単純な見方は、厳に戒めなければなりません。

 ところで、中国が「真珠の首飾り」(ミャンマー、バングラデシュ、スリランカ、モルディブ、セイシェル、モーリシャス等への影響力拡大、パキスタンのグワダラ港近代化等、インド包囲の動きを意味する)でインドを締め付けているとの見方があります。

 しかし、インド海軍は、マラッカ海峡の出口アンダマン諸島に根拠地を持っており、中国海軍を決定的に不利な地位に置いています。また、米海軍が根拠地とするディエゴ・ガルシア島は、太平洋で言えばハワイのような戦略的位置にあり、ここには海軍及び空軍の基地、海兵隊物資集積施設等が置かれています。ディエゴ・ガルシアの米軍施設は50年間租借権が2016年に切れる点が問題ですが、仮にここから撤退するとしても、豪州のスターリング海軍基地、あるいはインド洋上の豪領ココス島が代替として可能です。

 以上の施設によって、実は、中国海軍はインド洋での行動をほぼ完全に封じられています。中国がセイシェル等の遠方に艦船を置いたところで、有事には補給ができません。こうした、インド洋のパワーバランスについても、正確に知っておく必要があるでしょう。

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