オクスフォード・アナリティカのCEOで、コフィー・アナンとの共著もある、ナデル・ムサヴィザデー(Nader Mousavizadeh)が、3月10日付FTに「イラン危機は見かけより安定している」と題し、イラン核危機は各国の思惑もあり、奇妙な均衡状態、安定状態にあるとの分析を内容とする論説を寄せています。
すなわち、長期にわたるイラン核危機は真実の時を迎え、今年戦争か平和かになるといわれている。
しかし、2013年も膠着状態が続く可能性が高い。関係国は言葉に出さないが、それを望んでいる。威嚇、話し合い、警告などはなされるが、ほとんど芝居で、関係者は外交的に孤立し、経済的に不調で、軍事的に閉じ込められたイランを、他のあり方より好んでいる。戦争はほとんどの人にとりタブーだし、イランとの和平も西側諸国にとり魅力的ではない。
イランの政権は、開放され、民主的で、世界経済に統合されたイランを望んでいない。事実、エリートはイランがパリア(注;国際社会より排除されている賎民的地位)であることに政治的、経済的な利益などを見出している。彼らには平和こそ、困ることなのだ。
米もイランの核は許容しないと宣言した後、オバマ大統領は戦争回避に努力している。米はいろいろなことをやっている。表向きの経済・金融制裁に加え、秘密でサボタージュやサイバー攻撃を行っている。これはサウジやイスラエルをなだめるためでもある。
イスラエルの安保関係者は、単独でイラン核インフラに大きな損害を与える能力がないことを知っており、現状が地域でのイスラエルの優位を維持すると考えている。
サウジと湾岸協力会議(GCC)諸国も、紛争より、経済的に困っているイランなどの現状維持を好んでいる。
中露にとっては、米がイランにかまけているのは戦略的に好都合である。
関係国はこのことを承知しており、現状維持はずっと維持されやすい。