2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年4月19日

 イランはイランが降伏しても西側は制裁をやめないこと、米はイランの野心が米の湾岸諸国を支持するプレゼンスと両立しないことを知っている。その力学は変わらない。

 この状況で西側の政策はどうなるのか。第一に、封じ込め戦略をとる、第二に、核開発についてのこちら側の設定する敷居によって封じ込める、第三に、戦争と石油輸送の阻害に至らないように外交をする、ということである。

 しかしこの統御された敵意の均衡には危険もある。短期的には、誤算、誤解などがありうる。長期的には、制裁が失敗し、イスラエルの単独攻撃に至ることもありうる。

 現政治指導者はこの危険に対処しえない。後継者たちが挑戦に応えられるまで、戦争を延期しうるか、それが問題である、と論じています。

 * * *

 この論説は、イラン核危機への各国の思惑を良く描写しています。関係国が、現状は許容できる、戦争にはしたくないと考えていることがよくわかります。それが、最近のイランとP5+1の交渉、さらに、その継続合意に反映されていると思われます。

 しかし、ムサヴィザデーが言うところの、この「管理された憎悪の均衡」は、論者自身が指摘するように、実に脆弱なものです。イラン側の核開発の進展状況、それに対するイスラエルの反応、サウジやGCC諸国の不安など、問題は多くあります。

 一方、ムサヴィザデーが、多くの人が指摘するイラン危機の不安定要素に着目するのではなく、均衡がなぜ継続しているかに着目して現状を分析した、着眼点にも注目すべきでしょう。つまり、この論説は、各国の本音をよく考えて情勢を分析することの大切さを、改めて教えてくれてもいるのです。

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