2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年1月28日

 2012 年12月20日、James Philips米ヘリテージ財団上席研究員は、同財団のホーム・ページ上に寄稿し、アラブの春は、イスラム主義者によって乗っ取られ、今や中東はイスラミストがもたらした冬となっているので、米国はこれを放置せず、米国の国益と自由を守らなければならない、と述べています。

 すなわち、「アラブの春」というのは希望的観測に基づいた誤った表現だった。二年経った現在、中東はより不安定かつ敵対的な地域となり、米国の利益も西側の価値観も危険に曝されている。

 各地でイスラミストが跳梁を極め、シャリア法を強制し自由を抑圧している。アルカイダは、そのイスラミスト全体主義革命の前衛となっている。

 イスラミストの思想は、被害者意識から生まれているが故に根強く、そして反米的である。

 アラブの諸王国は、最悪の影響からは免れているが、やはりエジプトが鍵である。モスレム同胞団の下のエジプト政権は、軍のクーデターを反クーデターで抑え込み、中国、イランなどを相手に、反米的な外交を展開している。またハマスを庇護し、イスラエルとの平和協定に違反して、シナイ半島に戦車を送っている。

 モスレム同胞団だけでなく、より過激なサラフィストなども勢いを得ている。英国のMI5の指摘によれば、アルカイダも勢力を盛り返している。

 オバマ政権は、民主主義を進める意図の無いイスラミスト運動に、過早に、民主主義のお墨付きを与えてしまった。それはカーターがイラン革命に対して行ったのと同じ過ちである。選挙は、民主主義にとって必要条件ではあるが、十分条件ではない。米国は、民主主義と自由を混同すべきではない。フランス革命、ロシア革命、イラン革命の例を見れば、民主主義と称した革命は自由でなく専制をもたらした。

 反米主義はイスラミストのDNAに深く埋め込まれている。米国が彼らを支持する条件として、アルカイダなどのテロに反対し、市民の自由と人権を尊重し、国際的な法的制度を遵守し、特にエジプトの場合はイスラエルとの平和協定の尊重を条件とすることを求めるべきである。


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