記事で紹介されているCCDCOEのハンドブックは、サイバー攻撃に国際法を適用しようとの初めての試みであり、サイバー攻撃による甚大な損害を防ぐことが重要な目的と考えられますが、同時に、この試みにより、サイバー攻撃の特色が改めて浮き彫りにされています。
サイバー攻撃に国際法が適用されるためには、関係国が、その適用に同意する必要があります。しかし、サイバー攻撃については、そもそもその存在を認めないのが通例です。ハンドブックが、サイバー攻撃がある国の政府のネットワークから行われた場合、それだけでその政府が攻撃をしたということはできないが、当該国が攻撃に関係していることは示している、と述べていることは、サイバー攻撃の発信源の特定が如何に困難かを示しています。サイバー攻撃に国際法が適用されるためには、関係国が適用に同意する条件が調うことが先決です。例えば、中国が適用を考慮する前提としては、中国自身もサイバー攻撃にさらされ、大きな被害を蒙るようになり、サイバー攻撃に関する国際法の必要性を認識するようになる、といったことが考えられます。
今回のハンドブックの作成は、サイバー攻撃に関するルール作りの1つの先例となる、貴重な作業です。武力行使に匹敵するようなサイバー攻撃に関する国際法の出発点は、やはり、既存の戦時国際法におくべきであり、ハンドブックが、ジュネーブ条約に従うべきであると主張しているのは、重要な第一歩といえるでしょう。
[特集] サイバー戦争
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