2024年12月2日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年5月10日

 4月9日付米Washington Post紙は社説を掲載し、4月5~6日に開催されたイラン核協議で、イランは、イスラエルの警告を尊重した対応をしており、レッドラインを示すことが外交を助けるので、レッドラインの設定を拒否してきたオバマ大統領は考え直すべきである、と論じています。

 すなわち、イランの核開発に関する協議は失望を呼ぶものだった。イラン側は、米国などの提案に応じず、双方の溝は深かった。「P5+1」が、中濃縮ウラン生産凍結の見返りに、部分的な制裁解除を提案したのに対し、イランは、全面制裁解除を求めた。

 この会合は外交プロセスを止めた。オバマ政権やその同盟国が、次回会合の日程設定を拒否したのは正しい。今のところ、危機はない。米、イスラエルは、すぐに軍事行動に行くわけではないし、6月のイラン大統領選挙後、イランがどう出るか、見ようとしている。

 これに貢献したのが、イスラエルのネタニヤフ首相である。2012年9月の国連総会で、ネタニヤフ首相が示したレッドラインが、イランの具体的な行動につながった。彼は、20%濃縮ウランを爆弾が作れるまで貯める事は許されない、今のままでは2013年半ばにこの線をイランは超える、と言った。

 イラン側は、ネタニヤフ首相の主張に根拠なしとしたが、その後、おかしなことが起こった。イラン政権は蓄積された濃縮ウランを研究炉用に振り向けた。20%濃縮ウランの40%が燃料などにされ、イスラエルのレッドラインを超えるのは早くて数カ月延期された。

 ネタニヤフのレッドラインは、イランの脅威への暫定的歯止めに過ぎない。

 しかし、ここには二つの教訓がある。軍事的脅威がイラン核兵器を阻止する戦略の一部であるべきこと、レッドラインの設定が外交を可能にすること、である。オバマ大統領は、ネタニヤフ首相からのレッドライン設定要求を拒否してきたが、考え直すべきである、と論じています。

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 この社説は、ネタニヤフ首相が述べたレッドラインがイランを動かしたことを評価し、オバマ大統領にもレッドラインを示すように求めたものです。


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