2024年7月23日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年7月9日

 ビッグデータ解析自体に、本質的な悪が含まれているわけではない。それは、官僚が市民の要求を満たすのに役に立つ。公衆の健康を改善する制度を作り、交通の流れを円滑化し、インフラ投資の対象を決め、犯罪と戦い、国家の安全を守るために役に立つ。しかし、誰が、活動家と犯罪者、テロリスト、あるいは、潜在的テロリストの間に線引きをするのだろうか。

 各政府は、それぞれのやり方で、ビッグデータを用いるであろう。情報がどのように使われるべきか異なった意見があるだろうが、全てのデータは、権力の濫用に対して脆弱である。国家がデータ収集により深く関与するようになるにしたがって、当局は、国家安全保障にとって適切と考える、全てのことに対して、最大限のコントロールを及ぼしたいと考えるようになるであろう。

 Googleは、中国において、反体制派と疑われる者の Gmailアカウントに対して、中国当局による、あるいは少なくとも当局に容認された、複数の攻撃を受けた。しかし、NSAによる監視の暴露は、全ての政府があらゆる脅威に対して防御するために、データを分析している、ということを思い出させてくれる。

 世界中で、個人に力を与えるコミュニケーション革命と、国家を守るデータ革命の競争が起きている。この競争がどういう結末を迎えるのかまだ分からないが、国家が持ちこたえることができないと仮定するのは、誤りである。この競争は、始まったばかりである、と論じています。

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 最近、従来のデータ解析ソフトウェアでは解析できないような大量のデータ(ビッグデータ)を、高度のコンピューター能力で分析し、有用な情報を得ようとする、ビッグデータ解析が、とみに注目を集めるようになっています。インターネット上のソーシャルメディアやYouTubeの膨大な情報は、ビッグデータの典型例ですが、それらを分析することにより、様々な事象を正確に把握できるようになってきているようです。国家安全保障に資する分析や、独裁政権がデモの発生や推移を予測することも可能でしょう。

 ビッグデータの時代には、高度な情報収集および分析ツールを持っている方が有利となります。その意味で、今までは、インターネットの発達は、政府と市民との関係において市民の方に有利に働いていたのが、ビッグデータによって政府の側に有利となるという側面があるようです。

 最近のNSAによる監視の暴露により、テロリストに関する情報を入手するためNSAが個人の電話や、Eメール、ツイッターなどの莫大な量の電子情報を入手、分析していたことが明らかになり、国の安全保障と個人のプライバシーの関係が問題とされていますが、これは、ビッグデータの時代の政府と市民の関係に関わる事象が既に起きていることを示す典型例と言えるでしょう。

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