2024年11月24日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年6月28日

 中国が、PAC-3、THAAD、オスプレイなどの米国の最先端軍事技術の設計図をサイバースパイで盗んだことが国防省に報告されました。これにより中国は紛争の際作戦を有利に進めることができるようになると見られる、とのエレン・ナカシマ記者による解説記事を5月28日付WP紙が掲載しています。

 すなわち、米政府、民間の専門家からなる「軍事科学委員会」(Defense Science Board)が最近国防省に提出した外部秘の報告書によれば、中国は米国の最先端軍事技術にサイバー攻撃をかけ、米国の海空軍力、ミサイル防衛関連の設計図を盗んだ。その中にはPAC-3として知られる最新パトリオット・ミサイル・システム、THAAD(Terminal High Altitude Area Defense=終末高高度防衛)として知られる陸軍の弾道弾ミサイル撃墜システム、イージス艦、F/A-18戦闘機、V-22オスプレイ、ブラックホーク・ヘリ、新型沿岸戦闘船、そして、これまでで最も高価な兵器システムであるF-35統合打撃戦闘機が含まれている。

 専門家によれば、サイバー窃盗の問題は3つある。第1は米国の先端技術の設計図を手に入れることで、中国は紛争の際作戦を有利に展開できること、第2は中国の先端軍事技術取得を容易にし、何十億という開発費を節約できること、第3は米国の設計図の使用で中国の軍事産業が利益を受けること、である。中国は、F-35の設計図を盗んだことで、中国の類似の戦闘機をより早く開発することが出来たものと見られている。

 報告書の公表版は、このようなサイバースパイは戦闘における米軍に重大な結果をもたらしかねない、と述べている。重大な結果には、米軍の作戦に重要な通信の切断、米の作戦を混乱させかねないデータの改竄、兵器の不作動、航空機、衛星、無人機の墜落などが含まれうる。

 アジアの安全保障を扱う米シンクタンク「Project 2049 Institute」のMark Stokes所長は、中国がTHAADやPAC-3の設計図を知れば、中国の弾道弾が米国や同盟国のミサイル防衛網を突破する可能性が高まる、と言っている。

 軍当局の幹部の一人は、「米国の兵器の生産契約者は、FBIから指摘されるまでサイバー攻撃を受けたことを知らない場合が多い。これは中国にとって何十億ドルの得である。中国は研究開発の25年分を節約した。馬鹿馬鹿しい話だ」と述べている。

 国防省は、問題に対処するため、2年前、軍需産業関連会社が国家安全庁の外部秘の脅威データを使ってウィルスが会社のコンピューターに入らないようにするパイロット計画を始めた。これに対し中国が下請け業者を対象とし始めたので、政府は脅威データをより多くの軍需契約会社や他の会社に提供することとしている。


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