2024年12月25日(水)

今月の旅指南

2013年8月23日

 島根半島の沖、日本海に浮かぶ隠岐諸島。かつては配流の地であり、江戸時代には北前船の寄港地として栄えるなど、多彩な文化交流がもたらした独自の伝統が今も残る。その1つが、2頭の雄牛がぶつかりあう「牛突(うしづ)き」だ。

「突け」「下がるな」など、綱取りの掛け声が場内に響く

 牛突きは鎌倉時代、承久の乱で隠岐に配流された後鳥羽上皇を慰めるために催したのが起源とされ、800年近い歴史を誇る。島根県隠岐の島町で開かれる牛突き大会の中で、特に歴史ある大会と位置づけられているのが、毎年9月1日、壇鏡(だんぎょう)神社の八朔(はっさく)祭に合わせて実施される「八朔牛突き大会」だ。

 隠岐の島町観光協会の小倉都さんによると、 

 「大会では、座元と寄り方の東西に分かれて対戦。芝切り、前頭、関脇、大関、横綱と、取組が進んでいきます。芝切りと前頭は5~7分ほど取り組んで、基本は引き分けとしますが、関脇以上は、どちらかの牛が逃げるまでやる真剣勝負です。数分で決着がつくこともあれば、取組が1時間に及ぶ時もあります」とのこと。

 八朔牛突き大会は、午後1時に土俵入りが始まり、午後3時30分頃まで続く。かつては農耕用に牛を飼う家が多く、取組も20番くらいまであったそうだ。今では農業の機械化で牛も減り、7、8番くらいになった。それだけに1頭の牛に懸ける想いが熱いのも確か。大会に牛を出すために、飼い主をはじめ、家族や親戚が一丸となる。

勝った牛に飛び乗って祝福するシーンも

 「闘牛や角突きと呼ばれる大会は国内数カ所で行われていますが、隠岐の牛突きは、“綱取り”と呼ばれる人が牛と一緒に最後まで戦うのが特徴です。大きな牛の息づかい、角と角がぶつかり合う音、そして綱取りの掛け声など、迫力あふれるシーンは目が離せません」

 すり鉢状の牛突き場の周囲では700~800人の見学者や関係者が集まり、固唾をのんで勝負の行方を見守る。敗走した牛は半年ほど休ませて、再度チャレンジさせるが、一度負けた牛の復帰は難しいのだとか。まさに誇り高き雄牛の、プライドをかけた戦いなのだ。

八朔牛突き大会
<開催日>9月1日
<会場>島根県隠岐の島町・佐山牛突き場(境線境港駅下車、境港からフェリー、西郷港からタクシー)
<問>隠岐の島町観光協会☎08512(2)0787
http://www.town.okinoshima.shimane.jp/sightseeing/yearly_event.html

                               ◆「ひととき」2013年9月号より

 

 

 

 
 

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