トランプ次期米大統領が安倍昭恵夫人、孫正義氏と相次いで会談、日本国内で物議を醸している。先を越された石破茂首相がメンツをつぶされたという悪評が少なくない。的を射ているかは措くとして、トランプ氏の動きからは、利益をもたらしてくれる人物、機会をことさら重視するという〝ディール〟(取引)優先の行動原則が伝わってくる。
年明け早々ともいわれる日米首脳会談、日本側は何を与えられるか。重い負担がのしかかる覚悟でのぞむべきだろう。
恩義ある故首相夫人を大歓迎
トランプ氏と昭恵夫人との夕食会は12月15日、フロリダ州マール・ア・ラーゴにある次期大統領の私邸で行われた。昭恵夫人は「一言、お礼とお祝いを言うためにお会いしたいとお願いしたところ、お招きいただきました」と、自らの希望だったことなど、その経緯を説明した。メラ二ア夫人も同席した純粋に私的な会合であり、日本政府は一切関与していないという。
次期大統領が、故安倍晋三首相の夫人とはいえ、民間人を招待するのは異例。トランプ氏が故晋三氏との関係をいかに重視していたかを明確に示している。
安倍氏は、トランプ氏が2016年の大統領選で当選した直後、各国首脳が〝模様眺め〟を決め込んでいたにもかかわらず、国際会議出席の途上ながら、わざわざニューヨークに立ち寄り、トランプタワーを訪問した。
元首相が各国首脳に先んじて訪問したことは、各国首脳にトランプ氏への信頼感を増進させる効果をもたらした。トランプ氏は後々まで、安倍氏に大きな恩義を感じていたようだ。
この時の会談で安倍氏は、中国の脅威、それに対する日米安保体制の重要性を力説、在日米軍駐留経費負担問題で日本側に厳しい発言を繰り返していたトランプ氏を説得。ゴルフの約束を取り付けて「信頼関係の基礎」(安倍晋三回顧録)を築いた。