トランプ前大統領のカムバックで、米国、世界はどう変わるか。米国内では分裂が加速、混乱を招き、「アメリカ・ファースト」を旗印に超大国のリーダーの地位を放棄、世界の〝アメリカ離れ〟が加速する懸念がある。
過激、放言というにはあまりに異常な言動で物議かもしてきた氏が、勝利を受けて〝変身〟するのか、従来通りの姿勢を貫くのか。シンゾウードナルドの親密な関係を築いてきた安倍晋三元首相亡きいま、日本も先方の出方を慎重に観察すべきときだろう。
8年前を彷彿とさせる
あたかも8年前の再現のようだった。
米大統領選の開票作業が続く11月6日未明、劣勢だったハリス副大統領を待つ支持者に、側近が「カマラは明日、演説する」と語りかけた。敗北を悟った支持者は肩を落とし、三々五々、会場であるワシントンの大学を後にした。
トランプ氏が勝利宣言したのはこの直後だった。
2016年の選挙。トランプ氏の対立候補だったヒラリー・クリントン元国務長官の敗色が濃くなった11月9日未明、選対チームの責任者が「今日はこれ以上何もない」と実質的な敗北宣言をした。トランプ氏の勝利宣言のタイミングを含めて今回と同じ光景だった。
ウクライナ、ロシアに有利な和平案か
今回の選挙結果に落胆している一人はウクライナのゼレンキー大統領だろう。
トランプ氏はウクライナ問題について、「24時間以内に解決できる」と豪語してきた。どのような腹案があるのか明らかではないが、ロシアが占拠するクリミア、東部ドネツク州のロシアへの割譲、現在の戦線を温存しての停戦など、ロシア側に有利な条件と伝えられる。
侵略を容認する和平案を欧州、北大西洋条約機構(NATO)が受け入れることはありえず、両者の関係は第一次トランプ政権時同様、一気に険悪化する恐れがある。
NATO各国は、早い時期からこうした事態を織り込み済だったようだ。今年に入って英国、フランス、ドイツなど各国、欧州連合(EU)もウクライナと安全保障協定をそれぞれ締結したのも、米国抜きでウクライナ問題に取り組むという決意の表れとみるべきだろう。