7月15日付けTaipei Times紙で、Joseph S. Nye Jr.米ハーバード大学教授は、中国は、北朝鮮の核保有に反対しつつも、北朝鮮の崩壊を恐れて十分な圧力を加えて来なかったが、若い金正恩の暴走に懸念を持っており、北朝鮮と距離を置きつつあるので、米韓両国は、半島有事の対応につき中国との対話を始めるべきである、と述べています。
すなわち、この20年間、中国は一貫して北朝鮮の核保有に反対するとしつつも、北朝鮮に対する中国の影響力は限られているとしてきた。中国は、核の問題よりも、北朝鮮の体制崩壊を防ぐことを優先してきた。難民流入の恐れだけでなく、韓国軍や米軍が北朝鮮に侵入する恐れがあるからである。
中国が金王朝の存続を重視したため、北朝鮮は中国に対し驚くほど強い影響力を持てた。
中国は、北朝鮮に対し、市場経済の導入を働きかけたが、金正日が経済自由化は政治的自由の要求に繋がると恐れていた為、中国の影響力は限られていた。
全面的軍事衝突となれば、米韓両国軍が勝つが、北朝鮮は、非武装地帯の15000門の火砲で韓国経済に相当の損害を与えることは可能である。
北朝鮮は、2010年の韓国海軍艦船の撃沈や島嶼砲撃に見られるように、大胆なリスクを取る能力を、長い間、誇示してきた。今春に入っても、核実験、ミサイル実験を行い、強硬な言辞を欲しい儘にしている。
しかし、今や、中国も忍耐力を失い始めているように見える。中国は経験の無い金正恩を父親の金正日ほどには信頼しておらず、また、中国の指導部は、北朝鮮が中国にとってリスクになっていることを理解し始めている。
北朝鮮が核実験を続ければ、日韓両国で核武装論が高まることは必至であり、また、北朝鮮が2010年のような挑発行為を韓国に対し再び行えば、韓国が強力に反撃し、中国も巻き込まれるからである。
中国の変化の兆候は興味深い。習近平は、オバマとの首脳会談で北朝鮮問題について「率直な」対話を行った後に、同盟国の北朝鮮との会談を行わずに、韓国の朴大統領と首脳会談を行い、その後に訪中した北朝鮮の高官は、二人とも、北朝鮮の行動につき叱責を受けた。