知財の仕事には情報収集が含まれる。世界各国の特許公報はその国における最先端の技術を公開しているものなので、それを見ていると各国で関心の高い技術の特徴が見えてくる。例えばイスラムの国でのカーナビの特許出願はメッカの方向を表示する機能があるなどで、これは海外でビジネスをするとき商品にどのような機能を盛り込むのが現地にとって最適になるのか検討する参考情報になる。
また、オープンイノベーションの方法の1つとして、各国の特許公報を見ながら興味深い技術を出願しているところをピックアップしてコンタクトするという使い方もある。
ソ連崩壊後の特許事情
ロシアがソ連といっていた時代には、ソ連の特許公報はあることはあったが最先端技術をきちんと出願していたわけではないので、ロシアに変わってからどのような技術があるか、また知財制度が機能しているかどうかを調べに現地へいってみた。
ソ連の頃の技術開発は、当時の西側諸国の企業のように互いに横目で見ながら開発競争をするというやり方ではなく、1つの技術のテーマ、例えばアルミニウムならそれだけを何年も何年もコツコツと脇目もふらず研究しており、狭い範囲では非常に深い技術になっていた。開発競争をしているわけではなかったので特許を出願するということもあまり必要がなく、知財制度はソ連の時代とその後しばらくは機能していなかった。20年近く前の話である。
(AP/アフロ)
その後、何度かロシアにいって知財制度がどれだけ使えるかを調べてみた。目的は模倣品対策である。中国と長く国境を接するロシアやカザフスタンは中国から陸路で模倣品が入ってくる。ホンダの例では特に発電機やオートバイである。オートバイは北緯の高い寒いところではあまり売れないが南側の草原の地域ではよく売れる。そこで対策がとれるかどうか。