喧嘩の作法

2014年1月17日

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久慈直登 (くじなおと)

日本知的財産協会専務理事

1952年岩手県久慈市生まれ。日本知的財産協会専務理事。本田技研工業株式会社知的財産部長を経て2012年より現職。主要論文としては国連世界知的所有権機構による世界への環境技術普及のための「WIPO Green」として採用された「プロバゲイティング グリーンテクノロジー」など。

 特許を出願して登録を維持するため官庁に納付する費用は国や内容のボリュームによって違うが単純化すると1カ国につき1件で100万円から300万円程度であり、さらに代理人の手続き費用や翻訳料がかかる。つまり1件の権利を1つの国でもつための投資額を数百万円と考えると出願するにはそれに見合う効果があげられるかどうかという判断になる。ロシアにはロシア特許のほか旧ソ連の国のうち9カ国をカバーするユーラシア特許という制度もある。それを使うと国が多くなる分、費用もかなり高くなる。

 特許出願は侵害をみつけてから行うというのではなく、定置網で魚をつかまえるように将来の侵害を待ち受ける作業になるため、投資が空振りに終わることもある。さらに、例えばカザフスタンでの裁判が信頼できて強制力があればいいが、今のところそうではない。特許があるとしても実際には使えないのである。つまりこうした国々への特許出願はまだ時期尚早である。

 この地域では模倣品や海賊版が生活の必需品になっているが、知財権を行使されるのは生活者からすると極めて迷惑ということになる。ロシアでさえ売られているDVDの95%は海賊版だそうである。今のところユーラシア特許出願という数百万円の投資は得られる効果に見合わない。強制力が担保されてはじめて見合うのである。

 私は普通に日本人の顔をしているつもりだが、ロシアで3度ウズベキスタン人に間違えられた。自分と同じようなヤツがそうした国にいるかと思うと全く根拠も何もないのだが、特許が使える時期は結構早くくるかもしれないと、気分的には思ったりする。

◆WEDGE2014年1月号より










 

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