2024年7月14日(日)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2009年5月1日

「安心社会」構築への施策は時限的で良いのか?

 もっとも、今回の経済危機対策には大きな課題がつきまとう。それは財源問題である。

 政府は、「対策に盛り込まれる各施策は、『重点化されたもの(Targeted)』、『時宜を得たもの(Timely)』、『時限的なもの(Temporary)』、という観点から、経済の下支えに必要なものや将来の成長力を高めるものなどを厳選(賢明な支出)し、優先順位を明らかにして果断な実施を図る。これにより、民需の自律的回復を促進するとともに、財政の持続可能性との整合性を確保する」(2009年4月21日、「経済危機対策」に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議)として、歳出歳入双方について財政収支面での配慮を明確にしている。

 しかし、たとえば、経済危機対策では健康長寿・子育てを重点項目として、介護職員の処遇改善や子育て応援特別手当を設けるが、いずれも時限的である。これでは、措置が終了した場合、長期にわたる継続的な追加施策が望ましい分野でも、施策の効果が消失してしまう。そのとき、増税してでも政策を継続できればよいが、果たして経済環境が増税を許す状況にあるのか心もとない。

 健康長寿にしろ、低炭素社会にしろ、今回新たに示された政策が有効で必要ならば、それは本来追加的な経済対策ではなく、恒久的な政策で行われなければならない。もちろん、それにはかなりの規模の財源が必要となる。

 今回の「経済危機対策」が浮き彫りにしたことは、深刻な経済危機に直面していて大規模な経済対策が不可欠な日本経済ということだけではない。それは、高齢化社会や内需主導経済といった平時の備えに不十分な日本の経済・社会であり、必要な施策にも対応しきれない脆弱な財政構造である。

 ちょうど、「安心社会実現会議」が発足し、「安心社会」をキーワードに日本が目指すべき国家像について検討することとなっている。そこでは、財源措置を含めた形で医療、雇用、年金、介護、子育てなどの政策目標と優先施策が示されることとなろう。また、経済財政諮問会議でも、医療や雇用など国民生活のセーフティネット強化を打ち出したうえで、それに対応する消費税や保険料など国民負担のあり方を検討するとしている。

 「経済危機対策」を契機として、バランスの取れた財政構造の上で日本の活力ある経済と安心できる社会の構築を目指す力強い動きが広がることを大いに期待したい。


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