トム・ベネット、BBCニュース(ロンドン)
パレスチナ・ガザ地区での停戦と、イスラム組織ハマスがガザで拘束している人質の解放をめぐる交渉が、数日中にカタールの首都ドーハで再開される見通しとなった。アメリカ、イスラエル、カタールの当局が24日、発表した。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の報道官は、同国の代表団が27日にカタールに向かうと明らかにした。
交渉にハマスが参加するかは、まだ明らかではない。
アメリカは、ハマスで最も過激な人物の1人とみられていた指導者のヤヒヤ・シンワル氏が先週死亡したことで、何らかの合意に至る可能性が高まるかもしれないと考えている。ただハマスは、合意を妨げているのはイスラエルだとしている。
アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は、「シンワルがいなくなったことで、(人質を)帰還させ、目的を達成する真の機会が訪れた」との見方を記者団に表明。
「目的」の中身については、「イスラエルが撤退でき、ハマスが再構築できず、パレスチナの人々が生活と未来を再建できる」ような合意の実現だとした。
パレスチナ当局の幹部は、ハマスの代表団が24日夜、エジプトの情報当局者らと会談しているとBBCに話した。ガザの現状と、事態の悪化を止めるための方法を協議しているという。
エジプトの政府関係者も、同国の治安当局幹部らが首都カイロで、ハマスの代表団と会うことになっているとBBCに話した。
一方、カタールのシェイク・ムハンマド・ビン・アブドルラフマン・アール・サーニ外相は、シンワル氏の死後、同国の仲介者らがハマスと「再び関わり」を持ったが、停戦交渉に関するハマスの現計画は「明確にならなかった」と説明。
「ドーハにある政治関係の事務所の代表団と何度か会っている。ここ数日、会合をもった」とした。また、エジプトもハマスと「継続中」の話し合いをしているところだと述べた。
イスラエルのネタニヤフ首相は、エジプトが「人質解放の取引を進める用意がある」ことを歓迎するとXに投稿した。
バイデン案は協議が頓挫
停戦と人質解放の合意をめぐるこれまでの協議では、アメリカのジョー・バイデン大統領が5月に発表した案が焦点となってきた。ハマスはこれに「前向き」だった。
その案は、6週間の停戦から始まる3段階の計画からなり、イスラエル国防軍(IDF)がガザの人口密集地域から撤退するとしていた。
また、人道支援の「急激な増加」や、人質とパレスチナ人囚人の交換も含まれていた。
最終的には、恒久的な「敵対行為の停止」と、ガザの大規模な復興計画につながるとされた。
しかし、協議は頓挫(とんざ)した。ネタニヤフ首相が、「フィラデルフィ回廊」と呼ばれるガザとエジプトの国境地帯にイスラエル軍を駐留させることに固執し、それが主な障害となった。
ブリンケン米国務長官にとっては、イスラエルとハマスの現在の戦争が約1年前に始まってから11回目の中東訪問となる。25日まで現地にいる予定。
ブリンケン氏は訪問中、「ガザ、ヨルダン川西岸、さらに中東地域のパレスチナ人に対する人道支援、水、衛生、妊産婦の健康」を目的とした1億3500万ドル(約205億円)の追加支援を発表した。これにより、この戦争が始まって以降のアメリカの支援総額は約12億ドル(約1820億円)に達した。
追加取材:ラシュディ・アブ・アルーフ