ジョナサン・ビール(防衛担当編集委員)、エイミー・ウォーカー(BBCニュース)
ウクライナが20日、イギリスから供与された長距離巡航ミサイル「ストームシャドウ」をロシア国内の標的に向けて初めて発射したことが、BBCの取材でわかった。
戦争で荒廃したウクライナはこれまで、他国から供与された長距離ミサイルの使用を自国内に限定されていた。
この攻撃の前日には、ウクライナは米製長距離ミサイルを初めてロシア国内に撃ち込んだ。アメリカのジョー・バイデン大統領は先に、ウクライナが米製ミサイルを使ってロシアを攻撃することを許可していた。
イギリス政府は作戦上の理由から、今回の報道に関するコメントを拒否している。しかし政府関係者は、ジョン・ヒーリー国防相が19日夜にウクライナ側と話をしていたことを認めている。
閣僚たちはロシアの反応を懸念し、この動きがイギリスが主導したものと受け止められないよう、報道対応に慎重になっている可能性が高い。
ヒーリー国防相は先に、「戦場でのウクライナの行動がすべてを物語っている」と英下院で述べていた。
ウクライナのルステム・ウメロフ国防相も、同国がロシア国内に対してストームシャドウを使用したのか明言を避けたが、「我が国を防衛するためにあらゆる手段を使っている」と述べた。
アメリカ国務省のマシュー・ミラー報道官も、英供与のミサイルの使用や、これらのミサイルを使用するための航法援助をアメリカが行っているかどうかについてはコメントしていない。
英供与のミサイルの使用についてウクライナがアメリカに相談や報告をしているのかとBBCが尋ねると、「他国の武器の使用について公に話すことはない」とミラー報道官は答えた。
方針を転換
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は西側の同盟国に対し、ロシア国内の標的に対する長距離ミサイルの使用を許可するよう繰り返し求めている。
ストームシャドウは強固な塹壕や弾薬庫を貫通するのに理想的な兵器と考えられている。ロシアもウクライナとの戦争でこうした兵器を使用している。
アメリカとイギリスはこれまで、自国が供与した兵器でロシア国内を攻撃することをウクライナに認めてこなかった。戦争をこれ以上エスカレートさせたくないためだと指摘されていた。
ところが17日、バイデン氏は自国が供与した陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)を使用してロシアを攻撃することをウクライナに許可した。
これは米政府関係者がブリーフィングで明らかにしたものだが、ゼレンスキー氏は同日、この件に関して発表することはないとし、「ミサイルそのものが語ることになる」と述べた。
ウクライナは19日、同国と国境を接するロシア・ブリャンスク州への攻撃にATACMSを使用した。
アメリカは20日、ロシア部隊の動きを減速させるための試みとして、ウクライナへの地雷供与を許可したことも発表した。
「ウクライナが必要とする限り確保」
ブラジル・リオデジャネイロで開催された20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)で19日、イギリスのキア・スターマー首相は、同国は「ウクライナが必要とするものを、必要とする限り確保する」つもりだと述べた。
ストームシャドウはイギリスとフランスが共同開発した長距離巡航ミサイルで、最大射程は約250キロメートル。フランスでは「スカルプ」という名で呼ばれている。
航空機から発射されたミサイルは、音速に近い速度で地形に沿って飛行する。落下すると弾頭が爆発する仕組みだ。
メッセージアプリ「テレグラム」には、ロシア西部クルスク州で撮影されたストームシャドウの破片が写っているとされる画像が浮上した。BBCヴェリファイ(検証チーム)はこの画像を兵器の専門家に見せた。
軍事・国家安全保障などが専門のオープンソース・インテリジェンス企業「JANES」の兵器担当チームマネジャー、アマエル・コトラースキー氏は、「中央に穴の開いた、大きな長方形の破片について、ストームシャドウ/スカルプEGミサイルのマウンティング・インターフェースの一部と一致することを確認した」と述べた。
別の専門家は、画像からは判断できないとした。
追加取材:レベッカ・ハートマン(ワシントン)、ルパート・キャリー(ロンドン)
(英語記事 Ukraine fires UK-supplied Storm Shadow missiles at Russia for first time)