2024年12月27日(金)

うつ病蔓延時代への処方箋

2014年2月12日

心の問題を抱える中国人は2.5億人

―― 精神科医の不足を補うようにEAPが乱立していると聞きますが、実態は。

張:正確な実態は把握できませんが、少なくても20数社はEAPとして活動しています。成功している日本のEAPと比べ事業規模は小さく市場規模もこれからです。ただし、将来性はあります。したがって現状では日本から進出しても収益面では、まだ厳しいでしょう。

 中国で心の問題を抱えている人は予備軍を含め2.5億人という推測があります。日本の人口をはるかに超える人数です。現在でもコンサルティングを受けている人は5万人。EAPの数も足りません。

 カウンセラーも質の面からみればまだまだです。自らのうつ病体験をもとにしている人、心理学を勉強したが経験の浅い人たちが大半です。これから養成していかなければならないでしょう。中国の大学にも心理学の学科はありますが、そこで学ぶ学生数は少ない。国家資格もあるのですが、魅力を感じていないのでしょう。

 患者数としては、中国北部より企業の多い南部の方が目立っています。都市では上海、杭州、武漢などです。この地域は日本からの進出企業も多く、生活、商習慣の違いなどで駐在員がうつ病に陥るケースも少なくありません。

―― 今後、EAPとして企業で働く社員の心の健康を、どのように守っていく考えですか。

張:先ほども言いましたが、中国ではまだまだ、うつ病などは恥ずかしい病気という意識が強くあります。社内対応で解決しようとしても無理があります。社外にある機関であり、相談における内容は会社には知らせない、個人の秘密は厳守されることをしっかりとアピールしていきたい。

 企業に対しては、うつ病の啓発活動をしていく方針です。社内に正しい知識をもった人を育成することで、調子の悪そうな社員を早く見つけ出すことができる。これは重要です。ストレスチェックなど定期的な健診も企業には義務として受け入れてもらいたい。

 特別なことをしていこうという考えはありません。日本の大手企業がすでに行っているようなEAPサービスを展開していくだけです。再発防止もありますが、まずは新たなうつ病患者を出さないことを企業とともに進めていく。それが、うつ病で苦しむ本人、社員の健康を維持させることで生産性の低下を防げる企業、サービス提供するEAPの3者ともにWINになることができます。

[特集] 「心の病」にどう向き合うべきか


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