東欧ジョージアの首都トビリシで29日、政府が欧州連合(EU)への加盟交渉を中断すると決定したことへの抗議が2日目に入った。
大勢のデモ参加者たちは「裏切り者」と叫び、28日夜の抗議活動で警察に殴られたとされるジャーナリストの写真を掲げた。
警察は2夜連続で催涙ガスを使用し、デモ参加者に対して放水砲を多用した。
イラクリ・コバヒゼ首相は、自分の決定を擁護。10月のジョージア議会選挙について、欧州議会が再実施を求めたことに対し、EUの「恐喝」だと非難した。
29日にはこれに先立ち、ジョージアの100人以上の外交官や公務員が公開書簡に署名し、政府の決定はジョージアの戦略的利益に合致しないと主張した。
このほか、ジョージアの駐ブルガリア大使が政府への抗議で辞任した。
催涙ガスと放水と暴力
抗議者たちは、政府の方針転換は、EU加盟を願う国民への裏切りと見なしている。EU加盟の目標はジョージアの憲法に明記されている。
警察は29日午前2時に、デモ参加者がトビリシ市内の複数の道路をバリケードで封鎖した後、警棒や催涙ガス、放水砲を使用して集会を解散させ始めた。
抗議はこの日の午前6時まで続いた。
ジョージア内務省は、抗議者が多くの場面で挑発行為に及び、インフラを損傷し、32人の警察官が「重傷を負った」と発表した。
負傷した抗議者の正確な数は不明だが、野党4党が連帯する「変化のための連合」のメンバーは、メンバーのナナ・マラシュキア氏が鼻を骨折したと述べた。
ソーシャルメディアに投稿された映像には、野党系テレビ局フォーミュラTVのジャーナリストが、警察に激しく殴られる様子が映っていた。
明確に「PRESS(報道)」と表示されたラベルを着用している他のメディア関係者も、標的にされた。
「前例のない」転換点
ジョージアでは2012年以来、与党「ジョージアの夢」が政権を担ってきた。同党はジョージアをEUから遠ざけ、ロシアに接近させようとしていると批判されている。
同国はまた、2023年からEUの正式な加盟候補国となっている。しかし、「外国勢力の利益を追求」しているとする組織を標的にしたロシア式の法律を制定したことで、EUは今年、同国の加盟に向けた作業を停止していた。
「ジョージアの夢」は今年10月の選挙での勝利を主張したが、野党側は不正があったとし、新たな国会をボイコットしている。親欧米派のサロメ・ズラビシヴィリ大統領も、投票を「違憲」だったとしている。
こうしたなか、欧州議会は28日、この選挙に「重大な不正」があったとする決議を採択した。同選挙は「悪化する民主主義の危機」の最新段階だとし、与党に「全責任がある」と述べている。
欧州議会は、票の買収や操作、有権者に対する脅迫、監視員らへの嫌がらせが報告されていることに、特に懸念を示した。また、コバヒゼ首相や、「ジョージアの夢」を結党した大富豪ビジナ・イヴァニシヴィリ氏を含む政府高官に対する制裁を求めている。
この決議を受け、コバヒゼ首相は「2028年末までEU加盟の問題を議題にしないことを決定した」と表明した。
EUのパヴェル・ヘルチンスキ・ジョージア大使29日は、政府の決定を「悲しく、胸が痛む」ものだと表現した。
ヘルチンスキ氏は、この決定がこれまでの政府の政策や大多数の国民の願いに反していると述べた。世論調査によると、80%以上のジョージア国民が、同国が将来的にはEU加盟国になるはずだと期待している。
ジョージアのギオルギ・マルグヴェラシヴィリ元大統領はBBCに対し、同国が「前例のない」転換点にあると述べ、「30年前に独立して以来、我々は明確に親西側、親北大西洋条約機構(NATO)、親EUであり続けた。これはどの政権でも一緒だった」と話した。
しかし今、「トビリシとクレムリンで権力を握る一部の人間が、ジョージアをできるだけ早くロシアの勢力圏に引き込もうとしている」と、マルグヴェラシヴィリ氏は付け加えた。
(英語記事 Thousands return to streets of Georgia after government suspends EU bid)