2024年12月2日(月)

BBC News

2024年12月2日

東欧ジョージアで、政府が欧州連合(EU)への加盟交渉を中断すると決定したことへの抗議が4日目に入った。大使などの辞任も相次いでいる。

複数の都市で大勢の市民が街で抗議運動を行うなか、イラクリ・コバヒゼ首相は、抗議参加者は野党のうその犠牲者だと反発。新たな選挙の要求を拒否した。

コバヒゼ首相は一方で、ジョージアのダヴィト・ザルカリアニ駐米大使が辞任したことを認めた。同大使には大きな重圧がかかっていたと説明した。

しかし首相は、抗議の原因を否定しようとし、「我々はなにも延期していない。それはうそだ」と述べた。

EUの欧州議会は11月28日、10月に行われたジョージアの議会選挙に「重大な不正」があったとする決議を採択した。同選挙は「悪化する民主主義の危機」の最新段階だとし、与党に「全責任がある」とした。

これを受け、与党「ジョージアの夢」は、EUが加盟手続きを、「恐喝」に使っていると非難し、政府が2028年末までEU加盟の問題を議題にしないことを決定したとした。

親EU派の人々は、1日夜に大規模な抗議活動を行った。首都トビリシの議会議事堂や警察に向かって花火が打ち上げられると、警察は放水砲で対応した。

独裁主義の性格が強まっているジョージア政府は、EUやアメリカから民主主義が後退していると非難されている。アメリカは1日、ジョージアとの戦略的パートナシップを停止すると通告した。

コバヒゼ首相は、「ジョージアの夢」はなお、「欧州への統合に貢献し(中略)欧州の夢に向かう道のりを続ける」とした。

しかし、公務員の多くはそれを信じていないようだ。これまでに大使数人が辞任したほか、3000人以上の公務員と教師が、EU加盟手続きの保留を非難する書簡に署名している。

多くのジョージア国民は、ジャーナリストや抗議者たちに向けられた暴力の激しさにショックを受けている。ジャーナリスト数十人が殴られたり、催涙スプレーを浴びせられたりし、病院に搬送された人もいた。

ジョージアの人権オンブズマン、レヴァン・イオセリアニ氏は「残虐な行為だ」と述べ、警察に権力を乱用しないよう呼びかけた。

これに対しコバヒゼ首相は、「組織的な暴力」を振るっているのは警察ではなく反対派グループだと述べた。

ジョージアの元EU大使で、現在は英王立国際問題研究所「チャタムハウス」に所属するナタリー・サバナジェ氏は、暴力のレベルや相次ぐ辞任、市民の不服従が、現在起きている抗議活動に「質的な変化」をもたらしていると指摘する。

「政府は人々が恐れると思ったのかもしれないが、そううまくはいかない」と、サバナジェ氏はBBCに語った。「昨日は、市民社会活動家やアーティストたちが公共放送局を乗っ取り、生放送に強制的に割り込んだ。私は以前(2003年)、革命前のジョージアでこうした光景を見たことがある」。

親欧米派のサロメ・ズラビシヴィリ大統領は、あと数週間で任期満了となる予定だが、先月の議会選挙以来、強力な象徴的存在となっている。ズラビシヴィリ大統領は現在、政府に対する抗議者をまとめ、新たな投票を要求している。

同大統領やデモ参加者らは、国民の圧倒的多数がEU加盟を支持しているにもかかわらず、政府がジョージアをロシアの影響下に戻そうとしていると非難している。

ジョージアの人口は約370万人で、その領土の20%は、2カ所の分離独立地域でロシア軍に占領されている。

「ジョージアの夢」は、クレムリン(ロシア大統領府)とのつながりを全面的に否定しているが、過去1年間に、国外からの資金提供を受けている市民社会団体やLGBT(性的マイノリティー)の権利を標的にする、ロシア式の法律を採択している。

「ジョージアの夢」政権と欧米諸国との関係は、非常に悪化している。

EUの外交トップに就任したばかりのカヤ・カッラス外務・安全保障政策上級代表は1日、ジョージア政府の行動は「EU側にも直接的な影響を及ぼす」と警告。アメリカの戦略的パートナーシップを一時停止するという決定も広く影響を及ぼすだろうとした。

だが、ジョージアのコバヒゼ首相には、大統領やその新たな選挙実施の呼びかけに時間を割く余裕はほとんどない。

同首相は、「ズラブチヴィリ氏は大統領としてあと4回だけ、金曜日を迎えられるが、同氏はそれを受け入れられていない。その心情は理解できるが、もちろん12月29日には退任しなければならない」と述べた。

(英語記事 Georgia's PM hits back as protests and resignations intensify

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c4gxernzr74o


新着記事

»もっと見る