国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は1日、イスラエルとパレスチナ・ガザ地区間の主要な検問所を通じた物資の輸送を一時停止すると発表した。治安上の懸念が理由。
UNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長は、直近の2回の輸送隊が南部ケレム・シャローム検問所近くで武装集団によって略奪されたと述べ、イスラエルに対して法と秩序の維持を呼びかけた。
イスラエル側はこれまで、ガザへの支援物資の通過を促進しているとし、ガザの武装組織ハマスが物資を略奪していると非難している。
ケレム・シャローム検問所は、国連が飢饉(ききん)寸前と警告するガザの200万人以上の人々に支援物資を届けるための主要なルートとなっている。
援助職員によると、この数週間で、犯罪組織によるますます暴力的な盗難が相次ぎ、援助物資の配布の主要な障害となっているという。
11月16日には、食料を運ぶ109台のトラックの車列が武装した男たちに襲われた。運転手たちは銃口を突きつけられ、97台のトラックが盗まれた。
後に、ガザの有名な犯罪組織が、ケレム・シャロームからの主要道路を2日間封鎖し、鉄柵を設置して援助物資の配布地点にアクセスしようとするトラックに発砲したと報告されている。
援助職員や地元の人々は、イスラエル国防軍(IDF)が監視するガザとイスラエルの国境の制限区域内で、武装した男たちが活動していると訴えている。
ラザリーニ氏は配送の一時停止を発表した際、ケレム・シャロームからの道路は「この数カ月間、安全ではなかった」と述べた。また、11月30日にさらに5台のトラックが盗まれた事件や、10月の事件を引きあいに出した。
ラザリーニ氏は「人道支援物資の配送は決して危険であってはならないし、試練と化すべきではない」と述べた。
そのうえでラザリーニ氏は、「法と秩序が崩壊」しており、援助職員を保護する責任はイスラエルにあるとした。
「イスラエルはガザへの援助物資が安全に流れることを確保し、人道支援者への攻撃を控えなければならない」
イスラエルは、国際的な圧力を受けて、ここ数カ月でガザ中部や北部で複数の検問所を開放し、援助物資の流入を増やしているが、ケレム・シャローム検問所は依然としてガザに最も多くの支援物資が入る主要ルートとなっている。
9月に国連で演説したイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、同国がガザの「すべての男性、女性、子供に1日あたり3000カロリー以上」を提供していると主張した。
ネタニヤフ首相はまた、ハマスが援助物資を盗み、高額で食料を販売することでガザ地区の支配を維持していると非難した。
UNRWAの発表に対して、ガザで人道問題を担当するイスラエルの軍事組織、イスラエル占領地政府活動調整官組織(COGAT)は、他の人道支援団体も援助物資を届けていると述べた。
調整官は、「我々はケレム・シャローム検問所およびイスラエルとガザ地区間の他の4カ所の検問所を通じ、ガザに向かう援助物資の量を増やすために国際社会と協力し続ける」と述べた。
国連と国際慈善団体が実施する「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」は11月、ガザに入る援助物資の数は、現在の紛争が始まった2023年10月以降で最も少ないと報告した。
IPCは、「ガザ地区の人道的状況は非常に深刻で急速に悪化しており、合理的な最悪のシナリオでは、ガザ地区全体に飢饉のリスクが存在する」と警告。「この壊滅的な状況を回避し緩和するためには、紛争に直接関与しているすべての者やその影響を受ける者からの即時の行動が必要だ」と述べた。
人道支援の職員が相次いで空爆の犠牲に、活動停止も
30日には、ガザで人道支援を行っている慈善団体「ワールド・セントラル・キッチン(WCK)」の職員3人が、イスラエルによる空爆で殺された。これを受け、WCKはガザ地区での運営を一時停止している。
イスラエルは、昨年10月7日のイスラエル襲撃に参加したWCK職員を標的にした攻撃だったと説明した。
WCKは、「スタッフを乗せた車両が攻撃されたことを知らせるのは非常に心が痛む」とし、詳細を求めているが、車両に乗っていた人物が10月7日の攻撃に関与していたという情報は「全く知らない」と付け加えた。
パレスチナの国営通信WAFAによると、30日にガザ地区南部のハンユニスで行われたこの空爆で5人が死亡し、そのうち3人がWCKの職員だった。
犠牲者には、ガザ地区で活動するWCKのキッチン主任も含まれていたという。
IDFは、この人物がキブツ(農業共同体)ニル・オズへの攻撃に関与していたと述べたが、「特定の誘拐未遂に結びつけることはできない」と付け加えた。
「このテロリストはIDFの情報機関によってしばらく監視されており、リアルタイムの位置情報に基づく信頼できる情報により攻撃された」
また、攻撃対象が「援助輸送のために調整されていない民間の無表示車両」だったと述べた。
その上で、WCKと国際社会に対し、「イスラエルに対するテロ活動に関与した労働者の雇用に関する説明と緊急調査」を要求した。
これとは別に、、イギリスの子供支援団体「セーブ・ザ・チルドレン」も30日、やはりハンユニスでの空爆で職員1人が殺されたと発表した。
この空爆が、WCKの職員が殺されたものと同じかは不明だ。
(英語記事 UN suspends aid deliveries through main Gaza crossing/Food charity pauses Gaza work after staff killed in Israeli strikstrike)