ドナルド・トランプ次期米大統領は、新興国9カ国からなるBRICSが米ドルに対抗する新たな通貨を創設した場合、100%の関税を課すと脅迫した。
トランプ次期大統領は11月30日、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、「BRICS諸国がドルから離れようとしているのを黙って見ている時代は終わった」と書いた。(編集部注:太字は原文では大文字)
BRICSは、中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカに加え、現在はイラン、エジプト、エチオピア、アラブ首長国連邦(UAE)も構成国となっている。
今年の米大統領選挙中、トランプ氏は広範な関税の導入を公約に掲げていた。最近では、高率の関税を課す脅しを加速させている。
ブラジルとロシアの主要な政治家たちは、米ドルの世界貿易における支配力を減らすため、BRICS通貨の創設を提案している。しかし、内部の意見の不一致から進展が遅れている。
トランプ次期大統領は、「これらの国々には、新しいBRICS通貨を創設せず、また強力な米ドルに代わる他の通貨を支持しないという約束を求める。そうでなければ100%の関税に直面し、素晴らしいアメリカ経済での売り上げに別れを告げることになるだろう」と投稿。
また、「他のカモを見つけるといい」とも述べた。
しかし、一部のトランプ支持者は、この発表が交渉戦術であり、約束というよりも初期の提案に過ぎないとの見方を示している。
次期大統領が提示した関税について質問されたテッド・クルーズ上院議員(共和党、テキサス州選出)は、「交渉力の重要性」に言及した。
クルーズ氏は1日の米CBSニュースの番組「フェイス・ザ・ネイション」で、「メキシコやカナダに対する関税の脅しでは、すぐに動きにつながっている」と述べた。
カナダのジャスティン・トルドー首相は11月29日、トランプ氏のフロリダ州の邸宅マール・ア・ラーゴを事前の予定なく訪れた。カナダ製品に対する25%の関税を回避するのが目的だったとみられている。
財務長官候補に指名されたスコット・ベッセント氏もかねて、次期大統領が大幅な関税引き上げを課すと脅しているのは交渉戦略の一環だと示唆していた。
ベッセント氏は、財務長官に指名される前に英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで、「私の一般的な見解は結局のところ、トランプ氏は自由貿易主義者だ」と語った。
「これはエスカレーションを止めるためのエスカレーションだ」
関税はだれが負担する?
関税とは、輸入品が国内に入る際にその価値に比例して課される国内税を指す。たとえば、5万ドルの価値がある自動車がアメリカに輸入され、25%の関税が課される場合、1万2500ドルの課税が発生する。
関税はトランプ次期大統領の経済ビジョンの中心要素であり、同氏はこれをアメリカ経済の成長、雇用の保護、税収の増加の手段と見なしている。
トランプ氏は以前、「これらの税金は人々のコストではなく、他国のコストだ」と主張していた。
しかしこの主張は、ほぼ全ての経済学者によって誤解を招くものと見なされている。
この課税は輸出する外国企業ではなく、実際には輸入する国内企業が支払うものだ。したがって、米企業が米政府に支払う単純な税金ともいえる。
トランプ氏は大統領1期目にさまざまな関税を導入。その多くは後任のジョー・バイデン大統領によって維持されている。経済の研究では、こうした負担の大部分は最終的にアメリカの消費者が負担していることが示唆されている。
(英語記事 Trump threatens 100% tariff on Brics nations if they try to replace dollar)