米連邦捜査局(FBI)のクリストファー・レイ長官は11日、来年1月の第2次ドナルド・トランプ政権発足の前に辞任する意向を表明した。トランプ氏は、大統領就任後にレイ長官を解任する方針を示していた。
レイ長官は、数週間にわたって熟慮し、辞任を決断したと、この日のFBIの会合で職員に伝えた。
トランプ次期大統領は既に、新たなFBI長官に、FBIを批判してきた元側近のキャッシュ・パテル氏を指名している。パテル氏は過去に、FBI権限を「劇的に」制限することを提案している。
レイ氏は2017年に、当時のトランプ大統領(1期目)によって長官に任命された。任期は通常どおり10年だった。
しかし、2021年に大統領を退任したトランプ氏をFBIが捜査したことを理由に、レイ氏は共和党からの批判に直面してきた。
レイ氏は11日のFBIの会合で、「私は(来年)1月、現政権の終了まで(長官を)務め、その後辞任することが、FBIにとって正しいことだと判断した」と語った。
「私の見解ではこれが、FBIがこの争いにこれ以上引きずり込まれるのを避ける、最善の手段であり、我々の仕事の進め方にとって非常に重要な価値観と原則を強化するものだ」と、レイ氏は付け加えた。
職員らは総立ちして拍手を送り、中には涙を流す人もいたと、関係者はAP通信に語った。
第1次トランプ政権下で任命も、関係悪化
トランプ氏は、2016年米大統領選でのロシアによる介入疑惑とトランプ陣営の関与を捜査していたジェイムズ・コーミーFBI長官(当時)を2017年に解任し、レイ氏を後任に任命した。
トランプ氏は当時、イェール大学ロースクール卒のレイ氏を「申し分のない資格」の持ち主だと語っていた。
しかし近年では、トランプ氏による機密文書持ち出しをめぐる連邦捜査にFBIが協力したことを受け、レイ氏は次期大統領のお気に入りではなくなっていた。
トランプ次期大統領はレイ氏の辞任意向の表明を受け、「アメリカにとって素晴らしい日だ」と述べた。
「アメリカの『不正省』として知られるようになった組織の武器化に終止符を打つだろう」と、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。「我々は今、すべてのアメリカ人のために、法の支配を回復する」。
今年の大統領選で勝利したトランプ次期大統領は先月末、来年1月の就任後にパテル氏をFBI長官に指名すると発表した。
パテル氏、「スムーズな移行」を
パテル氏は11日、「スムーズな移行を楽しみにしている。私は就任1日目から仕事をする準備ができている」と述べた。
「上院議員たちは素晴らしい仕事をしてきた。助言と同意のプロセスを通じて彼らの信頼と信用を獲得し、FBIに法と秩序と誠実さを取り戻すことを楽しみにしている」
パテル氏のFBI長官就任には、上院の承認が必要となる。それまでの間は、ポール・アベイトFBI副長官がレイ氏に代わってFBIを取り仕切ることになると、BBCが提携する米CBSニュースは報じている。
パテル氏は過去に、FBI権限を「劇的に」制限することを提案している。回顧録「Government Gangsters(政府のギャング)」では、FBIの「上層部」をクビにすることで、FBI内にある「政府の専制政治」を根絶するよう求めている。
パテル氏の指名をめぐっては、世界トップクラスの法執行機関の一つを率いる適格性があるのか、疑問視する声が上がっている。
しかし、一部の共和党議員はパテル氏の指名を歓迎している。
政界などの反応
「FBIには改革が大いに必要とされている」と、チャック・グラスリー上院議員(アイオワ州、共和党)はソーシャルメディアに投稿。アメリカ国民には透明性と説明責任が示されるべきだと付け加えた。
民主党のディック・ダービン上院多数党院内幹事は、レイ氏の功績に感謝するとともに、FBIは「間もなく、その将来をめぐる深刻な問題を抱えた新時代に乗り出すことになる」と述べた。
メリック・ガーランド司法長官は声明で、レイ氏は民主党、共和党の「両党の大統領のもとでFBI長官を7年間務めるなど、何十年もの間、立派に誠実な態度でこの国に尽くしてきた」と称賛した。
連邦捜査局捜査官協会(FBIAA)は、レイ氏は「困難な時期を、この国の安全を守る仕事に着実に集中しながら」捜査官たちを導いたと述べた。
(英語記事 FBI Director Christopher Wray to resign before Trump takes office)