2024年11月11日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、2期目のトランプ政権は1期目とは異なった世界に直面し、姿を消した相手もいれば強大となった者もいると指摘するウォルター・ラッセル・ミードの論説を掲載している。
トランプが再選を果たすや否や、内外の関心はトランプが第2期にどのような外交政策を行うかに向けられた。トランプは、新たな「終わりのない」戦争や、トランプが米国の利害に関係ないと考える紛争にかかわることは避けたいと思っている。一方、自分を力のある世界的指導者として見せることを望んでいる。
トランプの外交政策はドクトリンよりは出来事によって動かされるだろう。中国による台湾封鎖、ロシアによる北大西洋条約機構(NATO)加盟国への攻撃、米国への大規模なテロ、イランによる核兵器開発等が起これば、米国の政策は大きく変わらざるを得ない。
17年にトランプが1期目を開始した時からの国際政治の変化を見てみたい。まず欧州については、17年には、経験を積んだドイツのメルケル首相と当時は人気があったフランスのマクロン大統領の2人が欧州諸国を引っ張っていた。今日、ドイツの連立政権は崩壊し、マクロンの権威は衰えた。
気候問題については、欧州内に分断が生じ、エネルギー価格を巡っての選挙民の不満が表面化した。移民問題についても、欧州の姿勢は、よりトランプの立場に近くなった。欧州連合(EU)は、17年に比して自信を失い、安全保障や中国を懸念している。
ウクライナとロシアに関しては、ウクライナへの支援を増強すれば、プーチンを退却させられるとの議論もある一方、ウクライナはロシアが受け入れられる条件で合意に達する方が安価でかつ現実的との議論もある。トランプは自由に政策変更をすることができる。
中東においては、米国のイラン政策が不在な状況となっている。17年、イラン核合意は、米国の主要な同盟国から強い支持を得ていた。
バイデン政権は、努力を払ったものの、イラン核合意を再生させることも、米・イラン関係の新たな道筋を描くこともできなかった。報道されたイランによるトランプ暗殺計画によって、より強硬なイラン敵視政策を行う可能性もある。
中国における経済苦境が深刻化しているので、トランプには中国に対して影響力を行使する余地がある。中国は、自動車から鉄鋼まで過剰生産が起こり輸出依存となっている。中国は米国の貿易上の圧力に脆弱となり、おそらくトランプと取引をしようとするだろう。