Economist誌11月16日号の社説が、トランプ政権への移行期は大きな変動の過程に当たるが、この不安定な時期が米国の敵に悪用され混乱が生ずるリスクを避ける必要があると論じている。
米国の選挙の前から、ウクライナと中東では戦争が荒れ狂い、太平洋は緊張で音を立て、世界は不安定だった。来るべき10週間は新たな危険をもたらすかも知れない。
ドナルド・トランプは外交をひっくり返したいと思っているが、1月20日までは就任しない。宙ぶらりんの時期が生ずることになるが、米国の敵はこれを悪用し、ルールを破り、勝ち取ったものを確定するために紛争をエスカレートさせかねない。米国の敵を抑止するために、バイデンとトランプのチームは相互の違いにかかわらず一致協力せねばならない。
トランプのこれまでの政権人事を見ると、彼の外交政策は過激なものとなりそうである。それぞれ国務長官と安全保障担当補佐官に指名されたマルコ・ルビオとマイク・ウォルツは中国とイランに対してタカ派の旧来の保守派のように思えるかも知れない。しかし、彼らはトランプに対し声高の忠誠心を示し、北大西洋条約機構(NATO)およびウクライナ戦争に対する苛立ちをトランプと共有したがゆえに指名されたのだ。
通商政策を率いるのは新たな関税戦争をやりたくてうずうずしている超保護主義のロバート・ライトハイザーであろう。国防総省を指揮するのは闇の政府を爆破したがっている新参者となろう。トランプは取引と型破りな助言に飢えているようである。
こういう事態であるので、諸外国には速やかに既成事実を作り、1月には優位に立とうとのインセンティブが働く。歓迎できる出来事もある。
例えば、ただ乗りをしていた米国の同盟国が突如として国防費の増額を始めた。しかし、問題を引き起こすものもあり得る。
プーチンは、和平協議が始まる前に出来るだけウクライナの領土を奪取しようと攻勢をエスカレートさせるかも知れない。イスラエルは、イランでの仕事をやりおおせること、また一方的に有利な休戦(複数)に持ち込むこと、を新政権が認めてくれることを希望して、ガザ、レバノン、その他の地域を叩きのめすかも知れない。
中国は、深刻な反応を引き起こすことなく台湾あるいはフィリピンをどこまでいじめることが出来るか探ろうとするかも知れない。南シナ海の緊張は高まりつつある。