先の米大統領選でカマラ・ハリス民主党候補が敗退したのをきっかけに、建国以来、女性大統領の誕生を否定し続ける米国社会の実像が改めて議論の俎上に上がっている。
男性が大統領であると成文化している合衆国憲法
「今回の大統領選挙は、米国が家父長社会(patriarchy)と決別する2度目のチャンスだったが失敗した。白人女性有権者たちが期待を裏切った」
ヒラリー・クリントン氏が米国史上初の女性候補として挑んだ2016年大統領選挙に続き、2人目の女性候補として立候補したカマラ・ハリス氏も今回、トランプ前大統領相手に敗北したことについて、MSNBCテレビの著名黒人女性キャスター、ジョイ・リードさんは、開票結果が判明した去る11月7日、解説を交えてこうコメントした。
ハリス氏の敗因を「家父長制」と結び付けたリードさんの発言は、直後に様々なSNSで取り上げられ、男女投稿者たちの間でたちまち議論が広がる結果となった。
果たして、レディー・ファーストの国アメリカは、一般の通念とは異なり男性の支配する「家父長社会」なのか?
そうだとする論拠として真っ先に挙げられるのが、他の諸国との対比で、建国以来、今日に至るまで最高指導者としての女性大統領が一度も誕生していない事実だ。
現代世界史を振り返ると、マーガレット・サッチャー、テレサ・メイ、リズ・トラス各首相を輩出したイギリスのほか、ドイツのアンゲラ・メルケル、イスラエルのゴルダ・メイア、デンマークのメッテ・フレデリクセン、フィンランドのサンナ・マリン、スウェーデンのマグダレナ・アンデルセン、フランスのエリザベット・ボルヌらがそれぞれ首相を務めた。アジア太平洋地域でも、インドのインディラ・ガンディ、パキスタンのベーナズィール・ブット、ニュージーランドのジャシンダ・アーダン、インドネシアのメガワッティ・スティアワティ、韓国の朴槿恵らが首相または大統領として国政を担ってきた。
日本では、女性首相こそ誕生していないが、古代史を通じ、推古天皇はじめ女性天皇10代8人が国を統治してきたことが知られている。
一方、米国にこれまで女性大統領が誕生しなかった一つの歴史的背景として、合衆国憲法自体が、大統領が男性であることを前提として成文化されている点がある。