2025年1月14日(火)

経済の常識 VS 政策の非常識

2025年1月14日

 韓国の為替レートでの1人当たりドル建て国内総生産(GDP)が2023年に日本を追い抜いたことが話題になっていた。しかし、国民の生活水準をより良く表す1人当たり購買力平価GDPでは韓国は15年にすでに日本を追い抜いていた。

(takasuu/gettyimages)

 図1は、日本と韓国とアメリカの1人当たり為替レートGDPと購買力平価GDPを示したものである。アメリカは主要7カ国(G7)の中で1人当たりGDPが最高なので、参照値として入れている。なお、アメリカのドルが基準なのでアメリカの1人当たり為替レートGDPと購買力平価GDPは同じである。

 このような日本と韓国の1人当たりGDPの動きをどう考えたら良いのだろうか。そのことを考える前にそれぞれの言葉の意味を確認しておこう。

 為替レート換算GDPはその時々の為替レートで自国通貨をドル換算したものである。購買力平価は、各国のGDPの構成項目の財やサービスの一定量をバスケットに入れ、それを購入するのに必要な金額を各国の通貨で表し、それらが等しい価値を持つと考えて決められた交換レートである。

 為替レートには、自由に貿易される財の価格が強く反映されるが、GDPは貿易財だけでなく、貿易が難しいまたは制限されている財やサービスが含まれている。例えば医療費、教育費、家賃、農産物、交通費、外食、あるいは美容室などの人的サービスなどだ。私たちの生活費には自由に貿易できる財だけでなく、できないものも含まれているのだから、国民の豊かさの指標としては購買力平価GDPの方が優れている。

 筆者は、一国の生活水準は購買力平価GDPで計るべきだから為替レートでのGDPを気にする必要はないとも思うのだ。

昔は内外価格差が問題だった

 1980年代の末から2010年頃まで、日本では内外価格差が問題だった。日本の財やサービスが他国と比べて高いために、為替レートでの1人当たりGDPの豊かさに比べ国民生活の豊かさがそれに追いついていないという問題だ。

 自由に貿易される財は安いが、そうでない財・サービスが割高なので、生活の豊かさが享受できないという問題だった。すると内外価格差は、購買平価GDPを為替レートのGDPで割ったものとなる(値が小さいほど内外価格差があることになる。値が1なら内外価格差はない)。

 図には日本と韓国についての内外価格差も示してあるが、日本の場合、1980年代の末から2010年頃まで内外価格差があった。つまり、日本の物価を為替レートのドルで計ると割高になっていた。

 ところが、現在では購買力平価GDPが為替レートGDPよりも大きい逆内外価格差となっている。一方、韓国では1995年を除いて内外価格差が生じたことはない。つまり、ほとんど常に逆内外価格差があった訳だ。


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