2025年1月6日(月)

バイデンのアメリカ

2024年12月12日

 米国の白人社会では今日もなお、「女ごときが大統領の座を狙うことなど、言語道断」といった雰囲気が存在することは事実であり、実際、筆者の白人の友人も、こうした言葉をしばしば口にしていた。

 自らも「WASP」に属するトランプ氏の勝因のひとつの重要なカギが、「WASP」の存在だったことを裏付けている。

 祖国イギリスの家父長的伝統を色濃く残す「WASP」社会、とくにトランプ次期大統領の強固な支持基盤である南部諸州では、今日でも妻は家事と育児に専念する一方、財布のひもは夫が握る家庭が珍しくない。

 これらの家庭では、妻の夫に対する絶対服従が前提であり、当然のことながら、政治、社会問題に対する夫の発言力も絶大で、妻は選挙の際の投票動向も夫に従うケースが圧倒的に多いといわれる。

 超保守派で知られるJ.D.バンス次期副大統領も、ネット上の書き込みで「生理が終わった女性たちは、政治に口出ししたりせず、家庭で孫の世話係に専念すべきだ」と述べている。

 前掲のCNN出口調査で、男女ともに白人の過半数がトランプ候補に投票した背景として、こうした白人保守派の間にはびこる「男性優位主義」があるのだ。

トランプ政権で勢いは増すか

 この点で、ハリス候補の熱烈支持者の一人だった国際的女優ジュリア・ロバーツさんの証言は、大きな話題となった。

 ロバーツさんはこの中で、二人の女性友達の告白として、期日前投票の際、トランプ支持者の自分の夫の怒りを買うのを恐れ、夫に内緒でひそかにハリス候補に投票したケースを紹介した上で、あえて全米の女性有権者に向けて「夫の意思の押し付けは無視し、秘密で自分の思う候補に投票しましょう」と呼びかけたのだった。

 司会者リードさんがいみじくも指摘した「家父長社会のアメリカ」をまさに想起させる一側面ともいえよう。

 そして、もしそうだとしたら、4年後の大統領選においても、女性候補が誰であれ勝利する可能性は少ないことになる。

 なぜなら、今回のトランプ返り咲きで早くも、「misogynistの復権」の動きが米マスコミの間で伝えられ始めており、次期4年間に一層、「男性優位主義」が勢いを増すとみられるからだ。

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