2025年1月15日(水)

World Energy Watch

2025年1月15日

 中国が2024年12月に米国向け重要鉱物の輸出制限を発表したことで、重要鉱物をめぐる米中の対立が鮮明となった。中国はこれまで国内で資源開発を進めるとともに、国外で鉱物権益の取得に積極的に動いてきた。

半導体をはじめ、最新技術の多くには重要鉱物が不可欠だ(kynny/gettyimages)

 近年の成長産業である人工知能(AI)や半導体に加え、気候変動対策として普及する太陽光・風力発電や電気自動車(EV)の製造には、多くの重要鉱物が必要となる。重要鉱物の獲得競争が激しくなる中、アフリカの重要鉱物にも注目が集まっている。

重要鉱物をめぐる米中間の対立

 24年12月3日、中国は一部の重要鉱物を対象とした対米輸出管理強化を発表した。同措置は主に、ガリウムやゲルマニウム、アンチモンなどに関連する軍民両用品目の対米輸出を原則禁止するほか、グラファイト(黒鉛)の米国向け輸出に際するエンドユーザーおよび用途審査をより厳格化する。

 中国による対米鉱物禁輸は、米国の対中輸出規制への対抗措置であると考えられる。米国は前日12月2日に中国向け半導体輸出規制の第3弾を発表し、軍事目的で利用にされるAIに必要な半導体製造装置(SME)の輸出規制強化に踏み切った。

 今般、中国が輸出を禁止するガリウムとゲルマニウムは半導体や太陽電池、LEDなどの電子部品の製造に必要なレアメタル(希少金属)であり、アンチモンも弾薬や赤外線ミサイルなどに使われる重要鉱物である。また規制対象となったグラファイトもEV向けリチウムイオン電池に欠かせない材料である。

 米国はこれらの重要鉱物の多くを中国から調達している。米国地質調査所(UGSS)によれば、米国の鉱物輸入に占める中国の割合(19~22年平均)は、アンチモンが63%、ゲルマニウムが54%、グラファイトが42%、ガリウムが21%を記録した(図1)。

 中国産ガリウムの依存度は低下傾向にある一方、米国はアンチモンやゲルマニウム、グラファイトは依然として中国からの供給に頼っている。この点から、中国は鉱物輸出規制カードを駆使することで、米国の経済・軍事面に一定程度の影響力を行使することが可能である。


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