2025年1月15日(水)

World Energy Watch

2025年1月15日

アフリカの重要鉱物をめぐる競争

 鉱物需要の高まりにより、重要鉱物が多く存在するサブサハラ・アフリカも新規調達先として注目されている(図3)。コンゴ民主共和国はコバルトの主要生産国であり、南アフリカはプラチナとマンガンでトップシェアを誇っている。グラファイトの生産量では23年、マダガスカルが世界2位、モザンビークが3位となった。

 銅はコンゴ民主共和国およびザンビアが、ボーキサイトはギニアが、リチウムはジンバブエが数少ない生産国である。ニッケルは24年にザンビアで生産が開始され、タンザニアでも採掘が準備されている。アフリカの鉱物資源の多くが現時点で未開発であるが、ナミビア(銅、グラファイト、リチウム、マンガン)やボツワナ(銅、コバルト、マンガン、ニッケル)、アンゴラ(銅)をはじめ各国で事業化が計画されている。

 中国は他国に先行して、アフリカでの鉱物権益を囲い込んできた。アフリカ政策研究所(APRI)の24年9月発行の報告書によれば、近年、中国はアフリカのリチウム鉱山に45億ドルを投資し、ナミビアやジンバブエ、マリなどの国々で多くのリチウム事業を支援している。また、コンゴ民主共和国のコバルト採掘事業17件のうち15件に中国が投資するなど、存在感を強めている。

 中国はまた、アフリカ産鉱物の最大購入国でもある。20年、アフリカの鉱物・金属の輸出総額の約3分の1にあたる166億ドル相当の鉱物が中国に輸出された。このように、中国はアフリカの鉱物開発に直接関与したり、自国への販路網を構築したりすることで、重要鉱物の国際的な供給網を拡大させている。

 他方、近年の特筆すべき動向では、湾岸産油国のUAEとサウジアラビアも経済多角化の一環として、アフリカ産鉱物の獲得に乗り出している。UAEは13年にギニアのボーキサイト事業に初めて参入した後、23年にコンゴ民主共和国で電子部品の原料であるスズやタンタル、タングステンを採掘する契約を締結した他、24年にザンビアでのモパニ銅鉱山の事業株式を取得し、アフリカ市場に着々と進出している。

 サウジアラビアの場合、現時点でアフリカ産鉱物に関連する取引が成立していないが、23年に海外の鉱物事業への投資を目的として、マナラ鉱物投資会社が発足した。同社がザンビアの銅鉱山への投資を計画するほか、ギニアやタンザニア、コンゴ民主共和国とも鉱物事業投資について協議中である。サウジアラビアも将来的にアフリカの鉱物市場でキープレイヤーとなるだろう。


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