米アップルの取締役会は、「多様性、公平性、包括性(DEI)」プログラムを廃止する提案に反対票を投じるよう、株主らに要請した。DEIをめぐっては、強く批判しているドナルド・トランプ氏が今月20日に大統領に復帰するのを前に、メタやアマゾンなどの米大企業でプログラムを後退させる動きがみられている。
アップルには、米保守系団体の「全国公共政策研究センター(NCPPR) 」が、DEIに関する方針を廃止するよう求めている。「訴訟、風評、財務上のリスク」につながるというのが理由。
NCPPRの提案は、来月25日に開かれるアップルの年次株主総会で、投票にかけられる予定となっている。
アップルの取締役会は、同社には適切な抑制と均衡(チェック・アンド・バランス)があるとし、NCPPRの提案は不要だとしている。
投資家らへの文書では、「アップルにはすでに確立された順守プログラムがあるため、この提案は不要だ」と主張。
DEIを後退させる案については、「法令順守の具体的な方法を提案し、会社のプログラムや方針を不適切なほど細かく管理しようとするもの」だとしている。
大企業のDEIプログラムをめぐっては、保守派の諸団体が法的措置を取ると脅している。最高裁が2023年に示した、大学でのアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)を違憲だとする判断に背くものだと主張している。
フェイスブックを所有するメタは先週、DEIの取り組みを縮小させた米企業の最新例となった。それまでに、アマゾン、ウォルマート、マクドナルドなどの大企業が同様の措置を取っていた。
メタは採用、取引先との関係、社員研修に影響を与えるこの決定について、スタッフへの通知で、「法的および政策的な状況が変化している」と説明した。また、最高裁のアファーマティブ・アクションの判断にも言及した。
メタのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、昨年11月の大統領選挙でトランプ前大統領が当選して以来、トランプ氏との関係改善に努めている。
同社は次期大統領の就任基金に100万ドル(約1億5700万円)を寄付しているほか、広報責任者に共和党員を雇い入れた。さらに、メタのソーシャルメディア・プラットフォームでファクトチェック機能を廃止すると発表した。
保守派団体は圧力を強めており、ザッカーバーグ氏のような動きを示す企業トップは珍しくない。