2024年12月15日付のウォールストリート・ジャーナル紙は、ロシアとドイツ両海軍による緊張状態を例に、バルト海が北大西洋条約機構(NATO)とロシアの衝突の火種になりかねないと警告し、同じくバルト海で発生した海底ケーブル切断事件との関連で、ロシアによるハイブリッド戦争への対応の難しさを解説している。
11月26日、ロシア海軍のコルベット艦がバルト海で石油タンカーを護衛していた。これにドイツのフリゲート艦が接近・追跡し、シーリンクス・ヘリコプターを飛ばして調査しようとしたところ、ロシアが照明弾を発射した。負傷者はいなかったが、この事案は、冷戦以来見られなかったロシアとNATOの対立の火種として、バルト海域が浮上していることを示している。
ウクライナへの全面侵攻以来、ロシアの軍艦はNATO艦艇に警告射撃を行い、電波妨害で航空機の運航を混乱させる等、危険な行動をとっている。軍事活動以外にも、ロシアの工作員はリトアニアをテロの踏み台として、物流大手DHLを使って民間航空機に発火装置を積みこむ等している。英国ではウクライナ人所有の建物が放火され、ポーランドではショッピングモールが放火され、当局は事件の背後にロシアがいると疑っている。
ドイツの国防相によれば、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟以降、ロシアはバルト海での軍事プレゼンスを強化し、冷戦以来見られなかったほど近隣諸国に攻撃的になっている。ロシアは艦隊の整備をバルト海の港に大きく依存している。
トルコがボスポラス海峡を通るすべての軍艦の航行を拒否し、また、バルト海以外のロシア海軍拠点はシリアにあるが、アサド政権崩壊後、ロシアはそこから追い出されるかもしれない。一方、ロシアの「影の船団」は、西側諸国の制裁に違反してバルト海を通航し、石油等の貨物を輸送している。
中国の貨物船「伊鵬3号」がバルト海における2つの海底ケーブルを故意に切断した疑いで11月19日に拘束された。同船は現在、警察船とNATO艦艇に囲まれている。捜査官らは、中国船長がロシアの諜報機関にそそのかされて、同船の錨でケーブルを切断したと考えている。