2025年1月15日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年1月14日

 もう一つの要因はシリアとウクライナである。シリアのタルトゥース海軍基地はロシアにとって地中海に面した唯一の艦船修理・補給基地であるが、アサド政権の崩壊により将来を見通せない状況で、他方、黒海の港湾はウクライナ戦争によりトルコがボスポラス海峡の通航を禁じている。従って、ロシアはバルト海の港に依存せざるを得ず、当面、西側とロシアの緊張は続くことになる。

ウクライナもハイブリッド戦で対抗

 ロシアのハイブリッド戦(軍事・非軍事の両面戦争)は、13年にゲラシモフ参謀総長名の論文で言及され、実行されてきた。本件記事が指摘するように、バルト海での緊張の高まりが、ハイブリッド戦の戦いとなることに留意する必要がある。

 本件記事にもあるように、ハイブリッド戦は「直接的かつ比例的に対応するのが非常に難しい」という面がある。しかし「比例的」な対抗措置をとっているのが、ウクライナである。ウクライナは国内の戦闘のみならず、すでにロシアの空港、弾薬庫、エネルギー施設、レーダーサイトに対しドローンによる攻撃を続けている他、侵攻の当初からサイバー攻撃、情報戦も行ってきている。

 24年12月17日、モスクワでロシア軍の放射線・化学・生物防護部隊長が爆殺された。ウクライナ国営通信は、「完全に正当な標的だ」とする関係者の発言を引用し、ウクライナの関与をほのめかしている。

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